灰を被らないシンデレラ





このバーはこういったひと時の遊びの出会いを楽しむ為の場所だ。
男も女も、そういう目的でやってくる。

しかも会員制と銘打つ事で、ある程度の知名度があったり身元の保証された者しか入店出来ない。
憂にとっては絶好の狩場だ。

自分をモノとしか見ていないあの父親も、憂が名のある人物と関係を持ったとあれば少しは焦るだろう。上手く運べば婚約破棄だ。


ーーもう、どうでも良い。


あの外道の膝を地面につかせてやる事ができるならば、憂は自分を犠牲にしてでも何処までも堕ちてやろうと心に決めたのだ。


予想通り、男は重ねた手を裏返し憂の手に指を絡めてきた。

これで成功。
奥に用意されている部屋まで持ち込んで仕舞えばこっちのものだ。

勝利を確信して嘆く父親の顔を想像し、内心でほくそ笑んだ。


しかし次の瞬間、伸びてきたもう一方の手で憂の腕は強く掴まれた。



「やっぱり来やがったなこのクソ女…」
「へ?」