灰を被らないシンデレラ




そうして目をつけたのは、一人でカウンターに腰掛ける男。

高級なスーツに身を包んでいるがその背中は逞しくしっかりしており、均整のとれた身体つきが見て取れる。
これで顔が好みでほどほどに酒に酔っていればなお良しだ。

憂は口の端を吊り上げ、その男に近付いて隣に立ち声を掛ける。


「お一人ですか?」


男の顔がゆっくりとこちらに向き、アタリだと直感した。

男は非常に整った顔立ちで、冷たい印象を思わせる切れ長の瞳と高い鼻筋、更に無駄な毛の無いきめ細やかな肌はどれも憂の好みだった。

憂は自分がどうすれば一番美しく見えるか良く知っている。
だから今もその表情を作って更に男に近寄り、カウンターに乗せられた手に自分のそれをそっと重ねた。

微動だにしない男の腕に胸を当て、唇を耳元に寄せる。


「お兄さん、すごくタイプなの。…私と遊びません?」


男をその気にさせる方法も心得ている。

それだけの為に磨かれた身体を駆使し、憂は妖艶に男を誘った。


全ては、あの父親への報復の為に。