灰を被らないシンデレラ






ーー誰でも良い。



そう思いながら、憂は目的の場所へ向かう車の中で揺られていた。

いつもの装いとは大きく変え、昼間のうちに父親名義のカードでこれでもかと高級な衣服を買い漁り、同じく新調したバッグや靴を身につけた。

メイクもいつもの派手なものは辞めて、全て薄づきで憂の素顔の美しさをより引き立てるものだけにとどめた。
髪も染め、明るい髪色から清純さをイメージさせる深い色合いに変えた。

これだけのものを揃えれば十分だろう。


そうして赴いたのは、とある会員制のバーだ。

父親の専属の運転手を脅して自宅から車を出させ、店の前に着くなり運転席を蹴り上げ無理矢理エスコートさせる。

入り口に立つ男に止められたが父の名前を出してにこりと微笑めば、すぐに男は頬を染めて恭しく中へ促してきた。


文字通り会員だけが入店を許されるこのバーは芸能人や政界の重役も利用する店で、とある目的の為に使われる有名なお店だ。

憂はそこに、そのとある目的の為にやってきた。

誰でも良いのだ。
見栄えが良くて、身元のしっかりした男ならば。