ただ、一面の青。


「お願い!償いたい!!お願い、青くん…」

必死に縋る私は引く程に醜いだろう。まともな人間なら気味が悪いに決まってる。現に瀬戸くんは、奇妙で不快なものに遭遇したみたいに引いて私を見ている。

青くんは…まともな人間じゃないみたいだ。

「じゃあ、しっかり償えよ」

涙を流す私の前に同じようにしゃがんで、やや上からの視線が嬉しそうにニヤリと細まった。


「…うん。…ありがとう」

「他の事なんて考えずに、精一杯、俺の機嫌だけ取ってろ」

「わかった」

流れた涙を青くんが指で掬う。やっと怒りが収まった気配に緊張が解ける。

モテる男はモテ講座の本なんて読まなくてもスマートが行動ができるのかと感心するくらいには、ようやく安堵できた。


「他の男に縋ってんなよ、バカ」

「うん」

「お前は俺の前でだけ泣いてろ」

「うん…そうするね」

ひどく歪んでいると思う。

「俺の言うことだけ聞けよ、菜乃花」

「うん、青くん」

10年前で止まった関係。
心に酷い傷を負ったまま、癒やされる事もなく体だけ成長してしまった。

「青くん、ありがとう…」

歪な関係だと分かっても縋る以外の方法が思いつかない。少しでも許してくれる可能性があるなら、それに頼る他ない。


青くんは、私が他の人といるのが嫌なんだ、と今はっきり分かった。

怒りの理由はきっとそれ。
私みたいな人間は、孤立すべきだと考えているんだろう。


なら、私はそれを受け入れるしかない。