「あの…えっと…青くんの元カノさんが来て…」
弁明をしようと視線を彷徨わせると「じゃなくて」と青くんが私の頬に手を当てて目を合わせてきた。人の目を見るのは苦手だ。その相手が青くんだと尚更緊張してしまう。
「なんで瀬戸に慰められる隙与えてんだよ」
あぁ、そっちか。泣いた理由を知りたいんじゃなかったのか。
その事実に気持ちが沈む。
本当に馬鹿みたいだと思う。青くんが私の心配するはずなんてないのに、当たり前の事に傷付いて。
「あっ……ごめん、なさい…」
潤んだ瞳を閉じて俯けば、瀬戸くんが私を隠すように間に入った。
「サク、お前どうしたんだよ」
「瀬戸には関係ねーよ」
「あるだろ。お前のせいで制服シワシワなんだけど」
チッと舌打ちする青くんに怖気もせず瀬戸くんも睨みつける。睨み合う二人の間には一触即発の雰囲気。恐怖で手が小刻みに震え出した。
何が悪いのか分からない。
私が泣いたのが悪いのか、青くんに見つかったのが悪いのか、そもそも瀬戸くんと話したのがいけないのか。
理由のない怒りなんて慣れているけど、理由がないものが一番怖い。
だって、何をしても許されない。
「サク、落ち着けよ。お前らしくねーぞ?」
「らしくねーって、瀬戸が俺の何を知ってんだよ」
「そりゃ、少なくとも4年の付き合いで」
「付き合いが長くても知らない事だらけだろ、お互いに」
含みを持たせた青くんは、瀬戸くんの影に隠れる私を体を傾けて覗き込んできた。
「お前さぁ、結局許してほしいって嘘な訳?」
