「他にも確か…こんな風に涙を拭うとか」
瀬戸くんが人差し指で涙を拭こうと手を伸ばしてきた。それを寸のところで背中を逸らして避ける。
「…え、なんで避けんの?」
「心臓が持ちそうにないので」
異性に触られて緊張すると言うのは至極真っ当な意見だと思うが、一軍男子にはそれが面白かったようで、瀬戸くんは今までに見た事ない程笑っている。
「植草さん、マジで面白いね」
「そう、、ですか?ありがとうございます」とお辞儀すればまた笑われる。
「俺もリンと一緒に植草さん推そうかな」
「…揶揄ってますよね?」
「だって面白いもん」
瀬戸くんは本当に思った事を口にするタイプのようだ。麟太朗くんといい、ユナちゃんといい、瀬戸くんといい、青くんの周りは嘘が付けない人が多いみたい。
ようやく笑い終えた瀬戸くんが「あ、ゴミついてるよ」ともう一度手を伸ばしてきた、その時。
その指が私に触れるか触れないかくらいのタイミングで「待てよ!!」と響く怒号。屋上に響く怒鳴り声に肩が跳ね、その声の主を確認した瞬間、血の気が引いた。
「お前何やってんだよ!!」
大股で近づいた青くんの表情には怒り。
鬼のような形相で瀬戸くんの腕を無理やり掴むと、呆気に取られた瀬戸くんが「え、何?」と青くんを凝視した。
「サク、なんでそんな怒ってんの」
青くんは泣き顔の私と瀬戸くんを交互に見ると、ドスを効かせ瀬戸くんを睨んだ。
「瀬戸、お前何してんだよ」
