ただ、一面の青。




予感はしていた。
ただ、こんなに早く広く噂が広まるとは。


「ほら、あの子。転校したてなのによくやるよね」

「大して美人でもないのに」

小さな声なのに不思議と耳に届く。

「誰か教えてあげたら?あんた遊びだよって」

「ガチ恋なら可哀想。サクは誰にも本気にならないのに」

まだ教室にすら辿り着いていないのに、この調子でやっていけるのか。

「ってかあの子さ、男関係で転校になったんじゃない?」

「言えてる!手出すの早すぎだもんね!」


人の想像力は凄い。根も歯もない噂を作る事だって容易。
好き勝手話し、歯止めなく広まり、各々が納得する『植草 菜乃花』像を作り上げていく。そして、今日が終わる頃には「植草 菜乃花は男好き」って噂に形を変えているに違いない。


教室の扉を開けると一気に視線が突き刺さる。その重い空気は何度経験しても気が滅入る。

「おはよう、ございます」

昨日一緒に遊んだ子達に挨拶をすれば、一瞬私を見て、すぐに何も聞こえなかったみたいに会話を続けた。

「ユナちゃんの使ってるリップさ——」

「え、すご〜」

「———でしょ」

アハハなんて声を出して、私に見せつけているんだろうか。自分達はあの後も楽しんだよ、って。