ただ、一面の青。



ベンチに座ると、青くんは太ももの間にペットボトルを挟んで蓋を開けようと試みる。だが、硬くてなかなか開かない。もう一度チャレンジしたけれど失敗に終わった。

苛立つ横顔に、控えめに声をかける。

「…あの、青…サクくん、手離したらいいんじゃない?」

その提案に青くんは手元に視線をやって、今気づいたみたいに「…あぁ、」と繋いだ手を離した。解放された手に血が巡り、熱を持って痺れが取れていく。

青くんは本当に喉が渇いていたみたいでペットボトルの半分程を一気に飲み干した。

「ってか、それ何?」

急な問いに首を傾ける。

「…それ、とは」

「『サクくん』ってやつ」

「…名前で呼ばれるの嫌いって聞いたから」

麟太朗くんが言う通り、青くんを『青』と呼ぶ人は一人もいなかった。


「お前に『サクくん』って呼ばれるの変。しかも語呂悪すぎだろ」

「それをいうなら『植草さん』だって、言いにくいよ」

口を尖らせた私を見て彼は一瞬笑ったが、ハッとすると、すぐに不機嫌な表情に戻る。

つられて緩んだ口元をぎゅっと引き締めた。私達は馴れ合う関係じゃない。


「…青くん」

「何?」

「…会えて、嬉しい」

「俺は会いたくなかったけどね」

「うん。知ってる。…ごめんね。嬉しいって思っちゃって。ごめん…」