え?と呆けた私を嘲笑う彼の雰囲気に、加虐的な色が加わった。
「植草菜乃花」
「…はい」
サラリと髪を撫でられ「お前、随分綺麗になって見違えたよ」と優しく言われる違和感。
「本当に、どこの誰かと思った」
「…それは、どういう」
ヒリヒリと緊張感が肌に刺さる。
なぜ彼は、こんなに機嫌が悪いのだろうか。
その答えはすぐに分かった。
「太田菜乃花」
それは衝撃。
「あ、お、、くん」
体の中心から寒気と震えが伝播していく。
「お前さ、名前変えれば罪がなくなるとでも思ったの?」
「…覚えて、いたの?」
「忘れるわけねーだろ。あんな胸糞悪い事」
苦々しく掠れた声が私の浅はかさを露呈させる。
「なんで今更現れた?」
「それは、、偶然で…」
どう謝れば良いのだろう。
どうすれば彼を邪魔せずに過ごせるのだろう。
何か言わなきゃ。そう考えて、考え尽くして、出た言葉。
「…青くん…許して」
つう、と涙が流れると「泣き虫は変わんないんだな」と彼は鼻で笑う。
後頭部に手を回し髪に指を通して撫でたかと思えば、ギシッと痛みが伝わった。
髪を下に引かれ無理やり上向かせられると、避けられない距離で青くんと目が合う。
「許して欲しければ、言う事聞けよ」
その言葉一つで伝わる憎しみ。
潜む狂気に喉が鳴った。
拒否すれば地獄。拒否しなくても地獄。
どちらにせよ地獄なら、青くんが少しでも幸せになる方を選びたかった。
「…うん。何でも聞くよ。それで青くんの気が済むなら」
これは、歪な物語。
私の懺悔の物語。
