「……あ…彩…あのさ?
あの人がまだ彼女って決まった訳じゃないじゃん?
……だからそんなに落ち込まないで?
───ね………?」
……不器用ながら。
ナナが必死に元気付けようとしてくれてる。
「…………」
ナナは優しいね───…。
その優しさに、ちょっとだけ甘えてみてもいい?
“都合いい”って、言われちゃうかな。
でも嫌なの。
今はどうしても受け入れたくないの。
だって真実はまだ分からないじゃない。
ただ何にもない人が、偶然一緒に歩いてただけかもしれないじゃない……?
………そうだよ。
今見た現実は、彩が想像している真実ではないかもしれない。
───…そんな希望を、
少しだけ持ちたいよ。
「………そうだよね。
まだ高山さんに直接聞いた訳じゃないもんね……。」
それを聞いたナナがパッと顔を上げた。
「───うんうんっ!
そうそう、まだ決まってない!
つーか決めつけない!
彩頑張れ!!!!
まだ何にもしてないんだからさっ♪」
「………うん♪」
────…そう。
まだ何も動いていないもの。
────♪♪……♪……
再び、ケータイが鳴り出した。
「────……」
着信が鳴り止まないケータイに、やっと目を向ける。
……亮────…。
「───…終わらせなきゃな……」
亮との関係を終わらせないと、あなたの元へは近付けない気がするから。



