────ドクン……。
心臓が軋み、伏せた視界が潤みそうになる。
針でも刺さったような感覚に、うまく呼吸さえ出来なくて。
「…彩…大丈夫…?」
「……うん……」
ナナが気をつかってくれてるけど。
───“大丈夫”、なワケない。
……あの人……誰……?
誰よ……?
こんな時、頭は嫌でも答えを導き出そうとする。
きっと。
“彼女”───…
そうだよね、間違いないよね。
あーあ……。
………バカ……。
本当バカだよな、あたし…。
高山さんがフリーな訳ないじゃん。
あんなにかっこよくて優しいんだもん…。
女の子がほっとくわけないよ……。
高山さんも高山さんで、寄ってくる女の子を無視なんてしないだろうし……。
「…………」
マジ、バカみたい
一人で勝手に盛り上がって、舞い上がってたあたしって一体何だったんだろ……。
こんなに自分の存在がちっぽけだったなんてね……。
思い知らされる。
高山さんの目にも頭にも、あたしは欠片さえ入っていないってこと。



