「──…応援歌。
…………ぶんに……。」
朝岡さんが空に向かって笑った。
朝岡さんは知っていた。
今日、ぶんちゃんが東京に旅立つということを。
だから、来てくれた。
あたしが一人泣いているんじゃないかと──…。
「──……ふ……っ
─────…ッ……」
優しさに気付く。
見えない優しさに、
見える優しさに。
もういい……?
もう泣いてもいい…?
今は空にいるから、
もう見てないよね……?
見送るまでは泣かないって決めたけど、無理みたい。
好きだったよ。
本当に本当に好きだったよ。
子供ながらに必死に恋したよ。
初めて、辛くて苦しい気持ちも味わった。
疑ったり責めたり、
どうしようもない惨めな立場も経験したよ。
それでも、あなたを見ていたよ。
恋は甘くて苦いものだと知った。
あなたによって、
わたしがいた。
恋に生かされていた。
恋をしたから生きていた。
生きることに必死になれた。
ぶんちゃん……
ぶんちゃん──……
初めて真剣に人を好きになれたのが、あなたでよかった。
あなたから、こんなにも人を想えるということを教えてもらった。
あなたから教えてもらった数知れない気持ちが、今も絶えず心に芽吹いている。
───…好きだった。
大好きだった。
今も輝く思い出を胸に
また、歩きたいと思う。
ぶんちゃん。
ありがとう───……



