───…着信相手はぶんちゃんだ。
…時計はもうすぐ日付が変わろうとしている。
明日受験なのに…
早く寝ないでいいのかな─…?
心配する反面、嬉しくて。
その気持ちに負けて、あたしは通話ボタンを押した。
─────プツッ。
『…もしもし?彩?』
「ぶんちゃん?どうしたの?」
少し声のトーンが低いぶんちゃん。
疲れているのかな…?
『いや…彩の声が聞きたくなってさ…』
『………』
ニヤッと笑う頬の筋肉を慌てて戻し……
「明日早いんでしょ?
早く寝なきゃ……」
『……そーだな…
ごめんな……』
「…もっと話したいけどね。明日頑張ってね!!」
ぶんちゃんの分まで明るい声を出して応援する。
『ありがと。』
「うん、じゃあね─…」
終話ボタンを押そうとした時だった。
『───彩!』
──急に呼び止められた。
「何?」
耳を慌ててケータイに戻す。
『──…いや…
何にもない……』
「やだな。
不安になっちゃダメだよ?
明日頑張って!」
『──うん…』
そう小さく呟くぶんちゃんの声が今でも忘れられない。
ねぇぶんちゃん……
あの時……
ちゃんと聞けば良かったのかな──…?



