ザァ───…。
さざ波がぶんちゃんの居場所を教えてくれた。
闇に呑まれそうな真っ黒い海を、ぶんちゃんは一人で見つめている。
「…ぶんちゃん─…」
あたしがそう呼ぶと、ぶんちゃんはハッとしたように振り向いた。
「──…彩」
隣に座り、しばらく言葉を交わす事なく海を見つめていた。
「…どうしたの…?」
そう問うと、ぶんちゃんは静かに首を振った。
何も語らないぶんちゃんに不安が広がる。
──あなたはいつもそうだ。
何も言わない。
「彩、花火しよっか。」
ぶんちゃんがライターの火を点け、あたしが朝岡さんから貰った花火を指差した。
「…うん……」
朝岡さんが手渡してくれたのは全て線香花火だった。
暗闇にポッと灯りが灯る。
「──…彩、あのさ…?」
「ん?」
「俺が受験終わったらさ、二人で旅行行こっか?」
「えっ?!」
驚いて線香花火がポトリと地面に落ちる。
旅行──……?



