「──…痛かった…?」
ぶんちゃんの腕の中、
とろんとしているあたしに向かって。
ぶんちゃんはあたしの髪に指を絡ませ、心配そうに尋ねてきた。
「…大丈夫…。」
本当は…
かなり痛くてびっくりした。
噂には聞いてたけど、初めて過ぎて何が何だかサッパリだ…。
──…でも、
この上ない幸せを噛みしめているのは確かだから。
「……あっ、そうだ…。」
「……?」
ぶんちゃんが何かを思い出したように、制服のポケットに手を入れた。
「──…これ、彩にあげる。」
「……えっ…?」
手に差し出されたのは、キラキラと光る綺麗な紫色の石。
夜の月明かりに照らされて、その石はいっそう眩い光を放っている。
「……これ……」
「──アメジスト。
覚えてない?」
───……。
記憶を引っ張り出して考える。
あれは確か、
ぶんちゃんと一緒に天然石のアクセサリーショップに行った時。
「──…彩の誕生石…?」
「そう。
アメジストは、努力する人に効く石なんだって。
彩にピッタリだなって。」
───…努力する人…?
「そうでもないよ…?」
第一、あたしは頑張ったと誇れる事がない。
全く、何も。
「俺から見たら、十分過ぎるくらい頑張ってるよ」
「……」
「でも、そんなに頑張らなくてもいいときもあるんだよ。
──…彩は、特に。
だからこれは御守り代わり。
……もしまた自分を傷つけたくなったらこれ見て思い出して?
一人じゃないんだって。」



