立ち込める浴室の湯気で頭がクラクラする。
……足が、急にすくむ。
もう逆上せたのかもしれない。
まだ、服も脱いでいないのに。
さっきからカタカタと震える指先がうっとうしい。
落ち着け、落ち着けったら……。
──…と、その時だった。
────パサッ…。
─────………!
ふいに背後から、服を脱ぐ音が聞こえる。
ドキン……ドキン……
もう、後ろは振り返れない。
後ろには、きっと知らないぶんちゃんがいるんだ。
そして更に──…
────カタン……。
ゆっくり近付いてくる、足音。
「────…彩…?」
────やめて。
名前を呼ばないで。
息が止まる。
死んじゃう。
────…ふわり。
後ろからふいに抱き締められて。
「脱がそうか──…?」
「───…っ…」
耳にかかる言葉が再び心臓を暴れさせた。



