観覧車を降り、夜の闇に輝く雪を見ていた。
幸せだ、と一人感じて呟いた。
白銀の粉が指輪に落ちる。
溶けて雫となる雪を見つめ、指輪にそっとキスを落として幸せを噛み締めた。
「……ふふっ……」
キョーコとマサシが幸せそうに微笑み合うのが遠目に見える。
そして───…。
──…カタン。
「………………」
「……て……」
…………ん?
あれ………?
観覧車から出て来るのは………
朝岡さんとチカさん……?
二人は観覧車から降りると、無言で離れた。
いや……
正しくはチカさんが一方的に朝岡さんから離れた、といった感じに見える。
…どうしたんだろう?
心配になったあたしは、チカさんに近寄った。
「…チカさん…?」
チカさんはあたしの声に数秒してからハッと振り向いた。
「あぁ、彩ちゃん!
うまくいった?」
よかった。
いつもの明るいチカさんだ。
「あっはい!チカさんは…」
「帰ろっか♪」
………え?
間髪入れずに帰って来た返答。
更に……。
「寒いねー♪
早く家帰ってお風呂入らないとねっ♪」
………?
「は、はい…。」
チカさんは逃げるようにサッと行ってしまった。
遠くの方で、朝岡さんがジッと立ち尽くしているのが見える。
「彩?どうしたの?
行こう?」
「う、うん……」
キョーコに肩を押される。
あたしはそのまま大して二人に深くは追求しなかった。
そんな大した問題じゃないだろうと勝手に判断したんだ。
───この瞬間だった。
気付くべきだった。
気付くべきだったんだ。
朝岡さんとチカさんの異変に。



