───本当は。
素直に憧れていた。
ずっと、ずっと。
何気なく目に止まる、
街を行き交う人の指で光る指輪。
ショーウィンドウに飾られている指輪を、恋人達が楽しそうに選んでいる姿。
指輪をプレゼントされて喜んで泣いている、ドラマやアニメのシーン。
───今はその主人公が自分なの?
嘘みたいで信じられない──…。
ガタガタと震える指で指輪を手にしてみる。
シルバーにキラリと光る指輪は、英数字が刻印されているデザインだ。
雑誌でしか見たことがない。
まさかこれってアトラスリング…?
「サイズ合ってるかな…。
彩の指、かなり細いから一番小さい号数にしたんだけど……。」
ぶんちゃんがあたしの薬指に触れる。
ねぇ…
号数とか色々悩んでくれたの…?
あたしの為に色々迷ってくれたの…?
指輪はスルリと難なくあたしの左薬指にはまった。
──…信じられない…。
信じられないよ…。
だって指輪だよ…?
「……サイズピッタリ…」
「よかった♪
一緒に買いに行っても良かったんだけど、最初にあげるプレゼントだからさ…
どーしてもサプライズで渡したかったんだ。」
「……で…でもいつ…?
いつ、ポケットの中に…」
「彩が映画館で爆睡してた時。」
──────!
そうだったの…?
あたしが寝てる隙に…。
考えてみれば、
あたしがポケットを無防備にしたのはあの時しかない…。
「…ありがとう……」
「驚いた?」
「……うん…」
くすくすとぶんちゃんが楽しそうに笑った。
だって…
だってね…?
プレゼントがないってあんな暗い顔するから。
まんまとぶんちゃんの思うツボにハマったじゃない…。
「…ま、俺からじゃなくて、あくまでもサンタクロースからのプレゼントだから。」
そう言うぶんちゃんと目が重なって。
短いけれど、少しだけ。
少しだけ……
唇を重ねた。
──…外は雪がチラチラとちらついて。
窓から見える白い結晶がね?
あたしにはすごく優しく見えたの─…。
ねぇ……
予想していたよりも、
ずっとずっと。
今までで一番最高のクリスマスをありがとう──…。



