走って走り続けて。
─────バタン!!
家へと到着するなり、自分の部屋へとこもった。
「彩ー!
ちょっと静かにドア閉めなさいよー!?」
……下からお母さんの声が小さく聞こえる。
でもあたしには聞こえない。
本当言うと、
もう誰からの声も聞きたくなんかない。
悲しくて悲しくて、
どうにかなりそうだ。
──…いや、もう既にどうにかなっていた。
…カッターを手に、
その悲しみをぶつけるかのように手首に刺し込む。
───何度も何度も。
頭に何度も何度も、
ぶんちゃんが。
ぶんちゃんの彼女が。
二人が笑い合う姿が。
朝岡さんからのとどめの声が。
映っては涙に変わる。
苦しかった。
どうしようもなかった。
苦しみをどうやって紛らわせばいいのか。
そんな方法なんか思い付かなかった。
みんなには笑われるし、
きっとこんな方法誰にも理解しては貰えない。
だけどあたしには、
これも1つの方法なの。
……リストカットは。



