あの子の成績表

☆☆☆

ここへ来て最初の日は狭い部屋の中にいることが私の仕事でした。
落ち着いてから自分のスカートのポケットの中を探ってみたけれど、中身は空っぽでした。

普段からここにはハンカチとティッシュ、それにキッズスマホを入れているので大いに焦りました。
「どうしたん? もしかしてなんかなくした?」

「うん。私のスマホがない」
ポケットを両方ともひっくり返して確認してみても、ほこりが出てくるだけです。
「あぁ、通信機器はここに来たときに回収されてるはずや。私も持ってたけど、いつの間にかなくなってたもん」

「そんな……」
スッと血の気が引く思いがしました。
実際に顔色が悪くなっていたようで、佳苗ちゃんが心配そうに私の顔を覗き込んできました。

「大丈夫? 初日やから、そりゃキツイわなぁ。でもな、ここって地下やからスマホがあってもどうせ外には通じないねん。色々不安で誰かに話したくなるかもしれんけど、親や友達への連絡手段はないねん」
連絡手段はない。

そう聞いた瞬間泣いてしまいそうになりました。
だって、正樹と約束をしました。
絶対にキッズスマホを持っているようにと。