あの子の成績表

すると用務員さんは悲しそうに眉を下げました。
「そうだね。君の言う通りだ。学校にいるときだけですべてを判断することはできないはずなんだけどなぁ……でも、もう『人間的評価』をすることが決まってしまった。その欄ができたのは10年前からで、最初はもちろん反対する先生や保護者の人も多かったけれど、今では誰もなにも言わなくなってしまった」

10年も前からあの欄があったことにも驚きましたが、今の用務員さんの説明にはもっと驚くべきことが隠されていました。
「私達の親もあの欄があることを知っているですか?」

聞くと、用務員さんは頷きました。
不意に、穂波のお母さんが『ターゲット』と言う言葉を使ったことや、吉岡勇くんのお母さんが『人間的評価』の欄が全員にあることを知っていたことを思い出しました。

あれは、親たちも自分の子供がいなくなる可能性があることを知っていたから言えた言葉だったんです。
「穂波は……私の友達は病弱でなかなか学校に来れなかっただけです。どうして『人間的評価』がマイナス100になってしまったんですか?」

「そうか。体が弱いことで社会に出てもまともには働けないと思われたのかもしれないなぁ。『人間的評価』には成績や生活態度はもちろん、出席日数も大きく関係してきている。君の友達は、そういうところでどんどん評価が低くなってしまったんだろう」