※静香目線※

〇翌日、学校、教室前

【桐谷くんに、告白されました】
静香「(教室の扉が地獄の門に見える)」
静香「手書き+矢印(全速力で逃げ帰った人)」
まるで地獄の入り口、がけっぷちみたいな気持ちで入りたくない!と内心パニックの静香

静香「(冷静に考えたら告白の途中で逃げるってかなり最低なのでは……?)」
教室の扉に両手で持たれる静香
桐山「入んないの?」
ドアと静香の隙間から声を「わっ」とかけるような桐山

静香「桐山くっ…!」
桐山「おはよ」
慌てる静香にいつも通りのほほーんダルそうな雰囲気してる感じの桐山

静香「(あれ?もしかして昨日の冗談なのかな)」
男友達A「手書き(おはよ~)」
桐山「(手書き(はよ~)」
すたすた教室に入る桐山に、そうかも?と思う静香
後ろを振り返って桐山がにこっと笑顔を見せて、動揺が静香に走る
静香「(ど……)」

〇学校、教室、昼休み、教壇の前
【どっち⁉】
桐山「じゃあ理科室の器具とセッティングは男子で、メニューと調達は女子」
桐山「衣装は各自担当のを頑張るってことでおけ?」
生徒全員「手書き(おけ~!)」
静香「(昼休みにさくっと話がまとまってる…!私ならHR使って1時間はかかるのに)」
え⁉と気まずそうな静香の隣で、桐山が一緒に話してる

生徒A「桐山めずらしいじゃん」
桐山「先生にお前だらけすぎって怒られてさ~」
生徒B、C「ほんとそれな!」
卒なくかわしてワイワイする桐山と生徒A、B、Cたち
静香「(なんで手伝ってくれるんだろう)」

桐山「森崎は予算表作るんだっけ?」
桐山「俺も手伝うよ」
静香「(⁉)」
後ろからポスっと肩に丸まってるプリントを渡す

静香「い、いいよ。これいつもやってるやつだし!前と一緒で…」
桐山「さっき今回から書き方変わったって連絡きてた」
桐山「(手書き)これ、そのプリント)」
静香「(!)」
断る静香にぴらっとプリントを見せる桐山
桐山「いなかったから、俺が説明聞いといたよ」
桐山「いっしょにやろ?=逃げないでね?」(←静香だけにこう聞こえる)
いい笑顔で軽く微笑む桐山

〇学校、放課後、教室、後ろの方の席、窓際、カーテンの近く
【で……なんで2人きりになるの?】
男子→理科室&倉庫へうきうき見学 女子→家庭科室で衣装&メニューを先生に相談(それぞれスマホを持ちつつ)
ぽつーんと残ってる桐山と静香が、机に後ろ前で座ってる

桐山「今回からまとめてじゃなくて、1日ごとにレシート清算するんだって」
静香「(あ…ちゃんと教えてくれるんだ。そうだよね)」
教えてくれる桐山を見て、あれ?と思う静香、話をちゃんとメモし始める

静香「(これ…桐山君がいなかったら、誰も聞いてくれてないかも)」
静香「(頼れる友達っちゃ友達もいないし…)」
委員長ポジションでぼっちなわけでもないけど、グループもない静香

静香「(自分で係の人探して、聞いて、それから戻って、担当分けして……)」
静香「(1人だと、私ってホント無駄な動きばっかだな…)」
アセアセ急いでいただろう自分を想像して、ふっとしゅんとする静香に気づく桐山

桐山「迷惑だった?」
静香「えっ…」
告白のことなのかと思って焦る静香

桐山「文化祭のこと。いろいろ手回ししたりして」
桐山「少しでも森崎が楽になればなって思ったんだけど」
静香「そ…そんなことないよ。すごく助かってる。この予算表も私1人だったら今ごろできてないし……」
【桐山君と自分の差を見せつけられて】
【うわべしかない私とは違うなって実感してる】
桐山「……」
【ダメだ。なんか泣きそう】
静香(桐山くんと喋ってると……)
桐山「森崎」
【ただ自分がいきがってるだけだって思い知らされる】
うつむきそうになる静香
パタパタと足音がしていることに桐山だけ気づく

桐山「静かに」
カーテンがひらめき、窓際の空間だけ切り取られたみたいになる
時が止まりそうな透明感のある桐山が、口元を手で優しく多いかぶせる一瞬に見とれる静香

生徒「あれー田中いない?」
桐山「まだ倉庫の方いるって」
生徒「そっか。ありがとー」
教室の入り口廊下側から生徒に声をかけられて、話す桐山
桐山がちょうど静香のいる場所をカーテンを後ろ手に持って隠してる


静香「(さ…さっきのなに⁉)」
カーテンの中で泣きそうだったけど、なぜか隠れさせられてドキドキしてしまう静香

【今まで誰にもバレなかったのに】
足音が遠ざかると、カーテンが桐山の上半身分くらい開く

【桐山くんには、見透かされてる】
桐山「大丈夫?」
静香「なんで……?」
桐山「見られたくないかなと思って」
【強がりすぎる私の】
桐山「ううん。違うな」
んーと考えてから発言する桐山に、弱みを見せる気なんかなかったのに!とショックな顔の静香

【自分でも嫌なところーー】
桐山「俺が見せたくなかった」
桐山「森崎がこんなに可愛い顔してるとこ」
静香「………へっ⁉」
桐山のまさかの言い方に、調子が狂う静香

桐山「人に弱いとこ見せたくないんでしょ?」
カーテンで静香をきゅっと巻き込んだままおねだりする桐山

桐山「だったら俺が隠してあげるから」
桐山「俺と付き合ってよ」