「朝比奈…?」
顔の左半分だけを手で覆っている姿が異様に見えたのだろう、どうしたのかと尋ねる界斗に泥のような感情が込み上がってくるのを感じてそのまま何も言わずに横を抜けようとした。
だというのに、頭より先に身体が動いたせいでさして鍛えられてもいない脚はそれについていけず、もつれて床に向かって倒れ込みそうになった。
「ーーっぶね…」
それを止めたのは界斗。
そして驚きで伸ばした手によって必然的に顔の全貌が明らかとなり、互いに向き合ったまま固まってしまった。
「……っ、あ…」
とうとうバレてしまった。
それも最悪のタイミングで。
サーっと全身の血の気が引くのを感じ界斗の腕から離れようともがくと、それを制するかのように腕を強く引かれ、そのまま近くの会議室へ押し込まれてしまった。



