ハロウィンの悪魔





ーーあ、だめだ。泣く。

たかが失恋。
別にどうにかなりたかったわけでもない。


過去に好意を寄せた人にフラれた時の方が、余程酷い物言いをされたはずだ。

そういえば、歳をとった時の方が失恋の傷は深いと誰かが言っていた。あれは誰だったか。



それからどれほどの時間が経っただろう。

頭は未だはっきりしないがいつまでもこうしている訳にもいかない。


ふらりと立ち上がれば、突然動いた反動で瞳に溜まっていた涙がポロリと落ちた。
それを拭おうと無意識に顔に手を伸ばす。

ここで普段の栞なら絶対しない行動をしてしまった。回らない頭のせいかグイ、と強く左目を擦ってしまったのだ。


「あ、」


マズいと思った時には時既に遅く、ポロリとコンタクトが落ちてしまった。

やってしまった。
よりにもよって左の方を落とすなんて。


その瞬間にスッと背筋が凍りつき、一瞬にして頭が冷えて冷静さを取り戻した。

予備はいつも懐に入れてある。

左目に手を当てたまま鏡のある場所へ向かおうと振り向いた時だった。




一番会いたくない顔と、目が合ってしまった。