ハロウィンの悪魔





あの夜、真っ直ぐな目で綺麗だと褒めてくれたあの言葉は嘘じゃなかった。


体を重ねている時だって、何度も好きだと、綺麗だと言ってくれた。

けれどそれでも信じられなかった。


それは栞自身に向けられた言葉じゃなかったから。


同じ人物なのに、全く知らない女性を見ているようで辛かった。だから逃げた。


どうしようもないくらい好きになってしまったから、本当の事を言って幻滅されるのが怖かった。

騙していたのかと拒絶されるのが怖かった。


黙り込む栞に、再び自分の名前を呼ぶ友人の声が耳に届く。



『何度も言うけど、御堂くんは良い人だよ。誠実でいい加減な事は言わない。本当にハロウィンの夜に会った女性が好きだよ。初めての女だからって理由だけでそこまでのめり込むと思う?』
「…知ってたんだ。初めてだって」
『だって葉くんの幼馴染だよ?まずそこから攻略したからね』


外堀から埋めるのは常識でしょ?と平然と言ってのける遥香には最早さすがとしか言いようがない。


さぞ葉を落とす為に界斗の事を調べ上げたのだろう。
そんな遥香の言葉なら間違いは無い。