一方で界斗は栞の発した荷が重い、という言葉に思う事があったらしい。
おもむろに立ち上がり、栞の背に立つ。
未だハンカチを口にあて時折咽せる栞の肩にそっと手を当てて後ろから囲うように抱き、耳元に顔を寄せ、小さな声で囁いた。
「なら責任は取らなくていいから…この後、一緒に過ごして欲しい」
低くも甘い声にゾクリと痺れが走る。
顔は見えずとも、どんな表情をしているかは分かる。
振り払わなければならないと頭ではわかっているのに、逃がさないとばかりに肩を掴む力は強く簡単には振り解けない。
「…駄目か?」
不安げな言葉とは裏腹に、言葉にしたその声に揺らぎはない。
耳に吐息がかかる度にピクリと体が正直に反応してしまう。
そのひどく甘美な悪魔の囁きに次第に理性は消え失せ抵抗することも忘れ、気付いた時には栞は首を縦に振っていた。



