ハロウィンの悪魔




「その日に何かあるのか?」
「えっ?えーと…」


素直に誕生日だからとは言えない。

去年バーで会った時、朧げだがそんな話をした気がするし、万が一にも覚えていたらこれがキッカケになって勘付かれるかもしれない。

なんとか必死に絞り出して出した答えは「旅行」だった。



「暑くもなく寒くもなく良い時期なので…毎年旅行には行ってて…」
「……」
「運が良ければ紅葉も見れるかなーと思って…」


自然な会話だ。何もおかしい所は無い。

だというのに目の前の男はじっとこちらを見つめて考えの読めない視線を向けてくる。


「と、とにかくこれはこちらで対処します。今課長が来客中なので戻ってきたら確認して一度連絡入れますね」


これ以上詮索しないで欲しいと願いながらそう伝えると、少しの間の後に「頼んだ」とだけ短く言った。


「あと接待費と経費申請がいくつかあるから来週中には共有フォルダに入れておく」
「承知しました」


ありがとうございますと付け加えると、界斗は微笑みながら軽く手を上げ、そのまま去っていった。


「〜っ」


突然投下された微笑みの爆弾にしっかり反応してしまった赤い顔を隠すように、栞は手に持っていたファイルで顔を覆った。