「なんか最近、勘違いしてるイタイ人いるんだよね」
「あーあの人ね。イケメンにちょっと相手にされたからって調子乗ってる例の人でしょ?」
鏡越しにチラチラとこちらの顔を伺っているのが分かる。
しっかり見えていたししっかり聞こえてもいたが、栞は無表情のまま反応はしなかった。
「三十路過ぎで独り身のオバサンのくせに高望みし過ぎちゃって、痛いよね〜」
「ちょっとそれキツ過ぎ!まー分かるけど」
「あのレベルでよく相手にしてもらえると思えるよね」
「鏡見てないんじゃない?じゃなきゃあんな格好死んでもイヤなんだけど」
「確かにー」
放っておけばどこまでも続く悪口のオンパレードに、栞は心底呆れながら無言でその場を立ち去った。
直接言ってこない辺りが陰湿だ。
学生時代も時々こういうことはあったが、まさか社会人にもなってやられるとは思わなかった。
それこそ昔はビクビクと怯えていちいち傷ついたけれど。
今だって散々な言われように腹も立つし非常に不快ではあるが、思ったよりショックは感じなかった。
逆にもういい大人なのにいつまで子供のような振る舞いをするのだろうと、若干哀れとすら思う。
三十代になってまで年下の言う事にいちいち目鯨を立てる方がみっともないし。



