ハロウィンの悪魔





「御堂さんこそ、どうなんですか?」


これ以上は危険だ。
なんとか自分の話から話題を逸らしたくてそう尋ねた。


「それは結婚願望についてか?それとも入れ込んでる女の話か?」
「どちらもです」


短くそう答えれば、界斗は運ばれてきた唐揚げを自身の皿へ移しながら言う。


「結婚については俺も同じようなものだな。親から言われなくも無いが、適当な女とするくらいならしなくて良い。…で、もう一つの話だが」


そこまで言うと、下を向いていた視線が不意に栞を捉えた。


「…因みにだが、朝比奈の下の名前…『シオリ』だよな」
「?そうですけど…」



脈絡の無い質問に不思議には思いつつも、素直に答えた。

自分の漢字に他に何か呼び方があっただろうかと考えたが、その話はそれで終わり直ぐに以前話した女“シホ”の話へ戻った。



「最近、全然会ってくれねえんだ」


どこか憂いを帯びた言葉に、チクリと胸が傷んだ。

それと同時に、界斗は恋愛相談がしたかったのかとここで気付いた。

出会い方がアレだったしあまり表立って想い人について言えないのは分かる。
普通ならそんな女やめておけと言う。自分だってそう言う。

それに彼の性格的にも誰にでもこういった話は振らないだろう。


だからこそ口が硬そうで生物学上的に一応女である自分に白羽の矢がたったのかと、そう思うとやけに納得した。


「…失礼ですが、脈が無いのでは?」


けれど残念な事に相談相手として自分を選んだのは間違いですよと、心の中で両手を合わせて頭を下げながら毒を吐く。


「かもな。…けど」


栞に“シホ”を重ねて見ているのだろうか、思いを馳せるような、優しい顔をした。


「やっぱまだ、諦められねえから」


思った以上に真剣な想いを寄せる界斗に、栞は酷く息がしづらくなった。