別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました

「……もう、おばあちゃんに会えないんだ」

　一週間前、祖母は病院で静かに息を引き取った。

　ひっそりと行われた葬儀の手配も、その後の手続きも叔父や叔母はほとんど関与しなかったので、佳純がひとりで済ませた。
　
　慌ただしさでごまかしてきた祖母ともう会えないという事実が、こうして普段の生活に戻ると否応なしに突き付けられる。

「おばあちゃん……」
　
　力なく呟くと、この世でたったひとりになってしまったような寂しさで胸が張り裂けそうになる。

　じっと俯く佳純の脳裏に、ふと祖母にかけられた言葉が浮かんだ。

『佳純はひとりぽっちなんかにならないわ。おばあちゃんにはわかるの。絶対幸せになれるからね』

　亡くなる少し前、昏睡状態から一度だけ覚醒した祖母は笑顔を浮かべながら佳純の手を握った。

　孫娘を心配し、前向きに生きてほしいという気持ちで出た言葉だったに違いない。

「そうだよね……私がいつまでも悲しんでたら、おばあちゃんに心配かけちゃう」

　祖母が安心できるように、明日からも毎日をしっかり生きていかなければ。
　佳純は涙をこらえ顔を上げると、気合を入れるように自分の頬を両手で軽くたたいた。