別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました

 『急で申し訳ありません』と店長に頭を下げ退職を申し出た4年前、辞めるまでの期間が短かったため店に迷惑をかけてしまった。
 それでも店長は『なにか困ったことがあったわけじゃないわよね』と佳純自身のことを気にかけてくれた。優しい店長になにも話せないまま辞めてしまったのは未だに申し訳なく思っている。

 今でも花は大好きだ。10年後か20年後かわからないけれど、遠い将来、また花に関われる仕事ができたらいいなと思っている。
(仕事じゃなくても身近に花が感じられる生活ができたら幸せだな。今はそんな余裕ないけど)
 
 しかし母と違って大輝は花に興味はないようだ。佳純のスカートを引っ張りながら見上げてくる。

「バスのる?」

「乗るよ。でもまだ時間があるから向こうのベンチで座ってお茶飲もうか」

 どうやらもう帰りたいようだ。佳純は苦笑して息子の頭を撫でた。

 ベンチの前にはコスモスが植わっていて、ちょっとした花畑のようになっていた。ピンクや白の花が風に揺れている。
 
 大輝と並んで座り、家から持参した水筒から小さなプラスチックのマグカップに麦茶をそそいで渡した。 
 両手で持って上手に飲む息子の横顔を見て、しみじみ思う。