別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました

「こ、この前まで出張してたから、そうかもしれないって思っただけです。あぁでも、やっぱり行くんですね。よかった、私、仮に誘われてもそんな遠くになんてとても行けませんから」

 ダメだ。そろそろこの会話を終わらせないと、心が軋んでおかしくなりそうだ。

「短い間でしたけど、ありがとうございました」

 大好き、だれよりも愛してる。あなたの目指す道をなんの障害もなくただ真っすぐ進んでほしい。だから。

「さようなら」

『待て、佳純――』

 佳純は震える手で通話終了をタップするとそのまま電源を落とした。

「……いかなきゃ……」

 声を絞り出し、操られた人形のように足元に置いておいたバッグを拾い上げる。そのまま玄関に向かい、ふと振り返った。

 父を亡くしてからひとりで住んでいたこの部屋に戻ることは二度とない。

『お願い、彼が飛躍する機会をあなたのわがままで奪わないで』

 芹那の言う通りだ。ここにいてはいけない。彼が日本にいようとフランスにいこうと関係なかった。

 だって、佳純はそのわがままを突き通そうとしているのだから。

「嘘、ついて、ごめんなさい」