別れた警視正パパに見つかって情熱愛に捕まりました

 それまで彼は店頭にあらかじめ準備してある仏花を買い求めていて、会計での簡単なやり取りくらいしかしたことがなかったから内心驚いた。

 用途を聞くと元上司の月命日に合わせて毎月墓参りをしているが、たまには変わった花を供えたいと言う。
 ここから少し歩いた場所にある霊園に通っていたようだ。

(そっか、それで……毎月通うなんてその方をとても大切に思っていらっしゃるんだろうな)

 そう思った佳純は笑顔で彼を見上げた。一六〇センチの佳純より二十センチくらい高そうだ。

『お供えに向かないものもありますが、基本的にはご自分が好きだなとか、その方が喜んでくれると思うお花を感覚で選んでいただいてもいいと思いますよ』

 佳純のアドバイスに頷くと彼は店内のショーケースに視線を移した。

 黒髪を後ろに流すように自然にセットし、意志が強そうなしっかりとした目もと、高い鼻に男らしい薄い唇。でも粗野ではなく上品な雰囲気も合わせ持っている。思案する横顔も端正だ……などと見とれていると彼は急にこちらを見たのでバッチリ目が合ってしまった。

「あ、あの……すみません」