白銀の子守唄 ~年下王太子の甘い執愛

 年は四歳くらいだろうか。
 銀色の長い髪と大きな緑色の目。手の込んだレースをあしらった白いドレスをまとっているせいか、雪の妖精のように見える。

 たった今まで泣いていたらしく頬は濡れ、目は充血しているが、それでも見とれてしまうくらい愛らしかった。

「どうしたの? 大丈夫?」

 女の子は目を見開いて黙っている。突然現れたマグダレーナに驚いているのだろう。

「ああ、ごめんなさい。驚かせるつもりはなかったの。わたくしはマグダレーナといいます。今日は王子様のお誕生祝いにお城へあがったの」
「マグ……レーナ?」
「ええ、そうよ。はじめまして」

 これ以上怯えさせないようにマグダレーナは膝をつき、相手と視線を合わせた。

「もしかしてお庭で迷ったの? お母様はどちらにいらっしゃるのかしら? わたくしが一緒に探してあげましょうか?」
「……うん」

 少し安心したのか、女の子がゆっくり立ち上がった。

 どこの誰かはわからないものの、服装や物腰から判断して高位貴族の令嬢だと思われた。おそらく母親や乳母は今ごろ必死に行方を捜していることだろう。

「さあ、みんながいるところに行きましょうね。きっとお母様はそこにいらっしゃるはずよ」

 手を差し出すと、おずおずと握り返された。

 女の子の小さな手はあたたかかったが、顎先は尖り、顔色も悪い。きちんと世話をされているように見えるのに、いったいどういうことだろう?

「あなたのお名前を聞いてもいいかしら?」

 ドレスの裾についた土を払ってやりながら、マグダレーナは緑の瞳を見つめた。一風変わった相手ではあるが、そのままにしてはおけなかったのだ。すると、

「……レーナ?」

 女の子は確認するようにマグダレーナを呼んだ。まだ幼いため、ちゃんと名前を発音することができなかったのだろう。