拝啓 、 人生をくれたキミへ






「ふっ!ふっ!」


 バットを全力で振り、素振りをしている様子の高峰


 そんな高峰を横目に、俺は


 野球ボールを打つ練習をする


 正直なことを言ってしまえば、


 どんなに素振りやイメージをしていても、


 実際にボールを打てないと意味が無い


 “実践あるのみ”なんて言葉をよく耳にするけれど、


 本当にその通りだと俺は思う



「翔ー、いくぞー!」


 横から肩を叩かれ、


 ピッチャーをしている先輩に話しかけられた


「あ、はい。よろしくお願いします!」


 俺はボールを打つ為にバットを構える


 先輩が定位置について、


 こちらに「投げるよー!」と合図してくれた


 先輩とボールをよく見ていると、


 綺麗なフォームと同時に、先輩の手からボールが離れた


 離れたボールは、俺の方へ物凄い速さで一直線に向かってきている


 こういう時こそ、焦らないように自分を落ち着かせながら


 ボールをよく見て、バットを振った



 ____ カキーンッ!



 甲高い音が聞こえると同時に、こちらに来ていたボールは


 先輩の方向に大きな弧を描くように遠くに飛んで行った


ボールの飛んで行った方を見ながら先輩が近寄ってくる


「お前、先週から今日までの3日で何があったんだよ……ホームラン打ててるじゃん!」


 驚いたような、ちょっと嬉しそうな表情を向けられ、


 少し照れくさくなった


 先週の金曜日までは出来なかった“ホームランを打つ”


 という目標も、褒められて嬉しい


「ぁ、ありがとうございます……!」


 俺が先輩に笑顔を向けてお礼をすると、


 満足そうにニカッと笑ってくれた


 少し離れた所で、部長と先生の話し声が聞こえた


「先生、そろそろ第一試合始めませんか?」


「お、一試合目始まるぞ」


 先輩も部長との話し声が聞こえたのか、


 俺の肩を二回トントンッと叩き、


 「頑張れよ」と声を掛けてくれた


「は、はい!頑張ります……!」


 よりやる気がでてきて、ワクワクし始めた