〇文化祭当日・午後
怜那「行ってらっしゃいませ、お嬢様」
客「きゃー! 絶対明日もきます!」
【これで、私の今日のシフトは終わった】
【なんとなく、龍崎くんと一緒に回るんだろうなって思ってたけど……】
シフトを終えた龍崎は、他校の制服を着た4人に囲まれている。
他校の女子1「ね、どこ行く?」
他校の男子1「お前の友達とかいる?」
他校の同級生に囲まれ、龍崎も楽しそうにしている。
怜那「(別に、約束なんてしてないもんね)」
怜那が俯く。
その瞬間、教室に佳凛(ツインテールの美少女)が入ってきて、いきなり怜那に抱き着く。
佳凛「やほ、おねーちゃん!」
佳凛「やっぱめちゃくちゃ格好いいじゃん!」
怜那「佳凛……」
あの可愛い子誰だ!? と周囲がざわつく。
佳凛はそんな周囲の反応には慣れており、笑顔で怜那を見つめてる。
佳凛「てか、もうちょっと早くきて、お姉ちゃんに接客してもらうつもりだったのに」
佳凛「電車が遅延したの。30分も! あり得なくない!?」
頬を膨らませる佳凛。
【相変わらず、佳凛は表情豊かだ】
【姉妹なのに……私とは全然違う】
【見た目だって、女の子っぽくて、すごく可愛いし】
佳凛「でも、お姉ちゃんが格好良すぎるから最高の気分」
怜那の腕に抱き着き、甘えた目で見つめてくる。
佳凛「佳凛と一緒に回ってくれるよね、お姉ちゃん!」
怜那「うん。校内、いろいろ見てまわりたいんでしょ」
【佳凛は今年、この学校を受験する予定だ】
【成績的にまだちょっと厳しいけど、毎日ちゃんと頑張ってる】
佳凛「うん。でも一番の目的はお姉ちゃんだけどね。あ、写真撮ろ?」
自撮りアプリで素早く写真を撮る佳凛。
佳凛「行こ、お姉ちゃん」
怜那の手を引っ張り、教室から連れ出そうとする佳凛。
教室を出ようとした瞬間、龍崎と目が合い、立ち止まってしまう。
龍崎「鈴原……」
気まずそうな顔の龍崎。
怜那「(なにその顔)」
怜那「(私だって龍崎くんが一緒に回ってくれなくても、佳凛がいるし)」
【事前に言ってほしかった……なんて、我儘すぎる】
怜那「また後でね」
さらっと手を振り、佳凛と共に教室を出る。
【……こういう時、ちゃんと拗ねられるような子なら、もっと可愛げがあったのかな】
〇夕方・中庭のベンチ
文化祭の屋台で買った焼きそばやチョコバナナ等を持って、怜那と佳凛の二人がベンチに座っている。
佳凛「本当お姉ちゃんって格好いいよね」
怜那「ありがとう」
佳凛「中学の時のロングヘアのお姉ちゃんも最高に可愛かったけど、今はもっと最高!」
中学の時の怜那を思い出す。
ロングヘアで、メイクもしていなかったため今よりかなり芋っぽい見た目。
怜那「あの時の私を可愛いなんて言うの、佳凛だけだよ」
佳凛「だって私、お姉ちゃん大好きだもん!」
えへへ、と笑う佳凛。
怜那「……可愛いのは佳凛だよ」
怜那「(本当に可愛い)」
【佳凛は昔からお姉ちゃんっ子だ】
【シスコンって周りにからかわれても、笑顔でそうだって頷いてるらしい】
【私も佳凛くらい、可愛かったらな……】
佳凛「ところでさ、お姉ちゃん」
佳凛「あの男、誰?」
怜那「あの男って?」
佳凛「さっきお姉ちゃんをじろじろ見てた人! 黒髪の……ちょっと眼つき悪い人だよ」
怜那「龍崎くん?」
名前を言った瞬間、佳凛が嫌そうな顔をする。
佳凛「あいつのこと、好きなの?」
怜那「えっ? な、なんで?」
動揺する怜那。つまらなそうな佳凛。
佳凛「妹相手にとぼけても意味ないからね」
佳凛「そっか、ああいうのが好みなのかぁ」
怜那「い、いや別にそういうわけじゃ……」
【もっと仲良くなりたいなって思うし、話せると嬉しいし】
【結構どきっとするけど、でもまだ別に、好きってわけじゃ……】
佳凛「お姉ちゃん。あの人の名前、フルネームで教えて」
怜那「えっ、なんで?」
スマホを開き、イソスタを起動する佳凛。
佳凛「どうせお姉ちゃん、あいつのアカウント知らないでしょ」
怜那「……そう、だけど」
怜那「(そもそも龍崎くんって、イソスタとかやってるの?)」
佳凛「戦はまず敵を知ることから、だよ」
怜那「(戦って……)
佳凛「私に任せてればいいからね、お姉ちゃん!」
立ち上がり、胸を張る佳凛。
〇夜・自室
怜那が部屋で勉強をしていると、佳凛がいきなり部屋に入ってくる。怜那も佳凛もルームウェア姿。
佳凛「お姉ちゃん、見て!」
スマホの画面を見せてくる。
表示されているイソスタのアカウントは、フォロー53、フォロワー41のアカウント。ユーザーネームは「dragon_0812」
怜那「これは?」
佳凛「たぶん、龍崎のアカウント。フォロワーは晴嵐(前に龍崎が通っていた高校)高校の子が多いし、たぶん確実。誕生日、8月12日じゃない?」
怜那「誕生日なんて……あっ」
LIMEのプロフィールを確認。誕生日が8月12日だと表示されている。
佳凛「ほらね」
得意げな佳凛。
佳凛「で、結構女の子のフォロワーも多いみたい」
フォロワー欄を佳凛が見せてくれる。男子らしきアカウントの方が多いが、女子もそれなりにいる。
怜那「(今日も女の子、来てたもんね……)」
怜那「(可愛い子たちだったな)」
文化祭に遊びにきていた他校の女子たちを思い出す。
佳凛「私が特に気になったのは、これ」
見せられたのは、女アイドルのアカウント。龍崎がフォローしている。
佳凛「龍崎がフォローしてる女の芸能人って、この子だけなの」
佳凛「オタクだったら、他のメンバーとかグループのアカウントもフォローしてそうじゃない?」
怜那「……それはそうかも」
アイドルのアカウントを見る。
茶髪のロングヘアで、「お洒落で可愛い年上のお姉さん」という感じ。
怜那「(龍崎くん、こういう女の子が好きなのかな)」
怜那「(私とは、全然違う)」
佳凛「あいつ、こういう子が好きなのかなって思ったんだけど」
龍崎の隣に、「年上お姉さん」系の女子が並んでいるところを想像してしまう。
【私といるより、ずっとお似合い】
【……っていうか、私と並んでても、友達にしか見えないだろうな】
佳凛「ねえ、お姉ちゃん」
怜那「なに?」
佳凛「私、最高に可愛くて格好いいお姉ちゃんが、男なんかのために変わるのはどうかと思うんだけど……」
悔しそうな顔をしつつも、佳凛が怜那の肩をがしっと掴む。
佳凛「……もしお姉ちゃんが、本当にどうしてもって言うなら……」
佳凛「お姉ちゃんのこと、あいつ好みの女の子にしてあげようか!?」
怜那「え!?」
驚いた顔をする怜那。
〇土曜の午前9時30分、玄関
【今日は、龍崎くんと一緒に大盛りのラーメンを食べに行く】
【たぶん龍崎くんは、デートだなんて思ってない】
佳凛「むかつくほどあいつ好みだから、安心して、お姉ちゃん」
親指を立てる佳凛。
怜那「……そうかな」
怜那「(本当に落ち着かない)」
怜那「(変じゃないかな?)
玄関の鏡で全身を確認する怜那。
黒髪のロングヘア(エクステで髪を伸ばしている)、いつもと違うフェミニン系のメイクやカラコン、そしてショート丈のニットワンピース)
普段の「王子様系」の姿とは全く違う、「年上お姉さん」っぽい見た目。
佳凛「あり得ないくらい可愛いから」
念を押す佳凛。
【髪もメイクも、佳凛が全部やってくれた】
【不安がるのは佳凛に失礼だ】
怜那「ありがとう。行ってきます」
佳凛「うん、行ってらっしゃい!」
〇午前10時・駅前
改札付近の柱にもたれかかり、私服姿の龍崎が立っている。
【怖い】
【似合ってないって思われたら、どうしよう】
怜那「(なんて、今さら考えてもどうにもならない)」
深呼吸し、真っ直ぐ歩き出す怜那。
【それに、龍崎くん以外なら絶対、恥ずかしくてこんな姿では会えないけど……】
メイド服姿を可愛いと褒めてくれた龍崎を思い出す。
【龍崎くんだから】
怜那「龍崎くん、待った?」
声をかけ、龍崎がゆっくり顔を上げる。
いつもと違う怜那の姿を見た瞬間、大きく目を見開く。
龍崎「鈴原……!?」
怜那「行ってらっしゃいませ、お嬢様」
客「きゃー! 絶対明日もきます!」
【これで、私の今日のシフトは終わった】
【なんとなく、龍崎くんと一緒に回るんだろうなって思ってたけど……】
シフトを終えた龍崎は、他校の制服を着た4人に囲まれている。
他校の女子1「ね、どこ行く?」
他校の男子1「お前の友達とかいる?」
他校の同級生に囲まれ、龍崎も楽しそうにしている。
怜那「(別に、約束なんてしてないもんね)」
怜那が俯く。
その瞬間、教室に佳凛(ツインテールの美少女)が入ってきて、いきなり怜那に抱き着く。
佳凛「やほ、おねーちゃん!」
佳凛「やっぱめちゃくちゃ格好いいじゃん!」
怜那「佳凛……」
あの可愛い子誰だ!? と周囲がざわつく。
佳凛はそんな周囲の反応には慣れており、笑顔で怜那を見つめてる。
佳凛「てか、もうちょっと早くきて、お姉ちゃんに接客してもらうつもりだったのに」
佳凛「電車が遅延したの。30分も! あり得なくない!?」
頬を膨らませる佳凛。
【相変わらず、佳凛は表情豊かだ】
【姉妹なのに……私とは全然違う】
【見た目だって、女の子っぽくて、すごく可愛いし】
佳凛「でも、お姉ちゃんが格好良すぎるから最高の気分」
怜那の腕に抱き着き、甘えた目で見つめてくる。
佳凛「佳凛と一緒に回ってくれるよね、お姉ちゃん!」
怜那「うん。校内、いろいろ見てまわりたいんでしょ」
【佳凛は今年、この学校を受験する予定だ】
【成績的にまだちょっと厳しいけど、毎日ちゃんと頑張ってる】
佳凛「うん。でも一番の目的はお姉ちゃんだけどね。あ、写真撮ろ?」
自撮りアプリで素早く写真を撮る佳凛。
佳凛「行こ、お姉ちゃん」
怜那の手を引っ張り、教室から連れ出そうとする佳凛。
教室を出ようとした瞬間、龍崎と目が合い、立ち止まってしまう。
龍崎「鈴原……」
気まずそうな顔の龍崎。
怜那「(なにその顔)」
怜那「(私だって龍崎くんが一緒に回ってくれなくても、佳凛がいるし)」
【事前に言ってほしかった……なんて、我儘すぎる】
怜那「また後でね」
さらっと手を振り、佳凛と共に教室を出る。
【……こういう時、ちゃんと拗ねられるような子なら、もっと可愛げがあったのかな】
〇夕方・中庭のベンチ
文化祭の屋台で買った焼きそばやチョコバナナ等を持って、怜那と佳凛の二人がベンチに座っている。
佳凛「本当お姉ちゃんって格好いいよね」
怜那「ありがとう」
佳凛「中学の時のロングヘアのお姉ちゃんも最高に可愛かったけど、今はもっと最高!」
中学の時の怜那を思い出す。
ロングヘアで、メイクもしていなかったため今よりかなり芋っぽい見た目。
怜那「あの時の私を可愛いなんて言うの、佳凛だけだよ」
佳凛「だって私、お姉ちゃん大好きだもん!」
えへへ、と笑う佳凛。
怜那「……可愛いのは佳凛だよ」
怜那「(本当に可愛い)」
【佳凛は昔からお姉ちゃんっ子だ】
【シスコンって周りにからかわれても、笑顔でそうだって頷いてるらしい】
【私も佳凛くらい、可愛かったらな……】
佳凛「ところでさ、お姉ちゃん」
佳凛「あの男、誰?」
怜那「あの男って?」
佳凛「さっきお姉ちゃんをじろじろ見てた人! 黒髪の……ちょっと眼つき悪い人だよ」
怜那「龍崎くん?」
名前を言った瞬間、佳凛が嫌そうな顔をする。
佳凛「あいつのこと、好きなの?」
怜那「えっ? な、なんで?」
動揺する怜那。つまらなそうな佳凛。
佳凛「妹相手にとぼけても意味ないからね」
佳凛「そっか、ああいうのが好みなのかぁ」
怜那「い、いや別にそういうわけじゃ……」
【もっと仲良くなりたいなって思うし、話せると嬉しいし】
【結構どきっとするけど、でもまだ別に、好きってわけじゃ……】
佳凛「お姉ちゃん。あの人の名前、フルネームで教えて」
怜那「えっ、なんで?」
スマホを開き、イソスタを起動する佳凛。
佳凛「どうせお姉ちゃん、あいつのアカウント知らないでしょ」
怜那「……そう、だけど」
怜那「(そもそも龍崎くんって、イソスタとかやってるの?)」
佳凛「戦はまず敵を知ることから、だよ」
怜那「(戦って……)
佳凛「私に任せてればいいからね、お姉ちゃん!」
立ち上がり、胸を張る佳凛。
〇夜・自室
怜那が部屋で勉強をしていると、佳凛がいきなり部屋に入ってくる。怜那も佳凛もルームウェア姿。
佳凛「お姉ちゃん、見て!」
スマホの画面を見せてくる。
表示されているイソスタのアカウントは、フォロー53、フォロワー41のアカウント。ユーザーネームは「dragon_0812」
怜那「これは?」
佳凛「たぶん、龍崎のアカウント。フォロワーは晴嵐(前に龍崎が通っていた高校)高校の子が多いし、たぶん確実。誕生日、8月12日じゃない?」
怜那「誕生日なんて……あっ」
LIMEのプロフィールを確認。誕生日が8月12日だと表示されている。
佳凛「ほらね」
得意げな佳凛。
佳凛「で、結構女の子のフォロワーも多いみたい」
フォロワー欄を佳凛が見せてくれる。男子らしきアカウントの方が多いが、女子もそれなりにいる。
怜那「(今日も女の子、来てたもんね……)」
怜那「(可愛い子たちだったな)」
文化祭に遊びにきていた他校の女子たちを思い出す。
佳凛「私が特に気になったのは、これ」
見せられたのは、女アイドルのアカウント。龍崎がフォローしている。
佳凛「龍崎がフォローしてる女の芸能人って、この子だけなの」
佳凛「オタクだったら、他のメンバーとかグループのアカウントもフォローしてそうじゃない?」
怜那「……それはそうかも」
アイドルのアカウントを見る。
茶髪のロングヘアで、「お洒落で可愛い年上のお姉さん」という感じ。
怜那「(龍崎くん、こういう女の子が好きなのかな)」
怜那「(私とは、全然違う)」
佳凛「あいつ、こういう子が好きなのかなって思ったんだけど」
龍崎の隣に、「年上お姉さん」系の女子が並んでいるところを想像してしまう。
【私といるより、ずっとお似合い】
【……っていうか、私と並んでても、友達にしか見えないだろうな】
佳凛「ねえ、お姉ちゃん」
怜那「なに?」
佳凛「私、最高に可愛くて格好いいお姉ちゃんが、男なんかのために変わるのはどうかと思うんだけど……」
悔しそうな顔をしつつも、佳凛が怜那の肩をがしっと掴む。
佳凛「……もしお姉ちゃんが、本当にどうしてもって言うなら……」
佳凛「お姉ちゃんのこと、あいつ好みの女の子にしてあげようか!?」
怜那「え!?」
驚いた顔をする怜那。
〇土曜の午前9時30分、玄関
【今日は、龍崎くんと一緒に大盛りのラーメンを食べに行く】
【たぶん龍崎くんは、デートだなんて思ってない】
佳凛「むかつくほどあいつ好みだから、安心して、お姉ちゃん」
親指を立てる佳凛。
怜那「……そうかな」
怜那「(本当に落ち着かない)」
怜那「(変じゃないかな?)
玄関の鏡で全身を確認する怜那。
黒髪のロングヘア(エクステで髪を伸ばしている)、いつもと違うフェミニン系のメイクやカラコン、そしてショート丈のニットワンピース)
普段の「王子様系」の姿とは全く違う、「年上お姉さん」っぽい見た目。
佳凛「あり得ないくらい可愛いから」
念を押す佳凛。
【髪もメイクも、佳凛が全部やってくれた】
【不安がるのは佳凛に失礼だ】
怜那「ありがとう。行ってきます」
佳凛「うん、行ってらっしゃい!」
〇午前10時・駅前
改札付近の柱にもたれかかり、私服姿の龍崎が立っている。
【怖い】
【似合ってないって思われたら、どうしよう】
怜那「(なんて、今さら考えてもどうにもならない)」
深呼吸し、真っ直ぐ歩き出す怜那。
【それに、龍崎くん以外なら絶対、恥ずかしくてこんな姿では会えないけど……】
メイド服姿を可愛いと褒めてくれた龍崎を思い出す。
【龍崎くんだから】
怜那「龍崎くん、待った?」
声をかけ、龍崎がゆっくり顔を上げる。
いつもと違う怜那の姿を見た瞬間、大きく目を見開く。
龍崎「鈴原……!?」
