〇昼休み・教室
昨日と同様、今日も多くの女子が怜那の周りに集まり、一緒に食事をしようと誘っている。
クラスの女子「今日こそ私たちと食べよ!」
クラスの女子2「いや、私たちと……!」
【誘ってくれるのは嬉しい】
【だけどみんな、「王子」っていうキャラを私に求めてるだけ】
【だからちょっと、疲れちゃうんだよね】
怜那「(なんて、贅沢な悩みか)」
中学時代を一瞬思い出す。
髪の毛がロングで今と雰囲気の違う怜那。教室で孤立し、一人で昼食をとっている。
【あの頃と比べたら、全然いい】
龍崎「なあ」
いきなりやってきた龍崎に、女子たちはびっくりする。
龍崎「行くぞ」
怜那「……行く? どこに?」
龍崎「飯」
龍崎にいきなり腕を掴まれ、教室を連れ出されそうになる。慌ててお弁当箱の入った袋を掴む。
クラスの女子たち「あっ、王子……!」
龍崎を怖がりつつも、残念そうな顔をする女子たち。
怜那「みんな、ごめん」
そのまま、龍崎に連れられて教室を出ていく。
〇昼休み・空き教室
怜那、龍崎の他には誰もいない。
龍崎「悪い、いきなり」
怜那「いや、全然。……びっくりはしたけど」
【龍崎くんとは朝、挨拶をした】
【でも、それだけ】
【龍崎くんは教室で私に話しかけようとはしなかった】
怜那「(だから、驚いた)」
少し悩んだような表情になった龍崎が、怜那をじっと見つめる。
龍崎「……王子って、好きでやってんの?」
怜那「えっ?」
龍崎「別に、言いたくないならいいんだけど」
怜那を見る龍崎の目は鋭い。
【ちょっと怖い】
【心の中を覗かれているみたいだ】
とっさに目を逸らし、俯きがちになりながら答える怜那。
怜那「周りが言い出したことだけど……別に、嫌ってわけじゃないよ」
龍崎「そうなのか」
龍崎の表情が柔らかくなる。
怜那「うん。みんなが褒めてくれてるのは分かってるから」
【ただ、少し息苦しいだけ】
【本当の私は全然、王子って柄じゃないのになって】
龍崎「……なら、余計なことしたな」
怜那「え?」
龍崎「なんか、鈴原が無理してるような気がしたから」
怜那「(だから、私を連れ出してくれたの?)」
怜那「(龍崎くん、私を心配してくれたんだ……)」
怜那の頬が赤くなり、それを隠そうと俯くが、髪が短いため上手くいかない。
そんな怜那を見て、くすっと柔らかく笑う龍崎。
龍崎「教室にいる時とは別人だな」
怜那「ど、どういうこと?」
龍崎「ころころ表情が変わる」
怜那「(そんなこと言われたの、初めてだ)」
【なんか恥ずかしい】
【ずっと、気持ちを顔に出せたらなって、そう思ってたはずなのに】
龍崎「……明日からは、いきなり連れ出したりしないから」
ほんの少し寂しそうな顔で微笑む龍崎。
怜那「待って」
龍崎が目を見開く。
どくん、と怜那の鼓動が速くなる。
怜那「(……恥ずかしい)」
怜那「(でも、ちゃんと言わなきゃ)」
【私は気持ちを顔に出すのも、自分の気持ちを言葉にするのも苦手】
【でも、苦手だって思ってるだけじゃなにも変われない】
怜那「さ、誘ってくれて嬉しかった。だからその、できればこれからも……」
怜那の顔が真っ赤になる。龍崎が声を上げて笑う。
龍崎「顔、赤すぎ」
さらに赤くなる怜那の顔。
龍崎「明日からも誘うから」
怜那「……うん」
龍崎「王子のこと奪うなって、女子から睨まれるかもな」
楽しそうに笑う龍崎。
怜那「……でも私、龍崎くんのお世話係だから」
〇授業中(六限目)・教室
田村(学級委員長の男子)「というわけで、うちのクラスの出し物はメイド&執事喫茶に決まりました!」
教室中、拍手。
【文化祭は来月だ】
【定期テストの一週間後っていう、ハードなスケジュール】
怜那「(メイド&執事、か)」
桃園(学級委員長の女子)「衣装はまとめて購入するから、メイドと執事をやる人を決めたいんですけど……」
クラスの女子たちの視線が怜那に集まる。
クラスの女子「王子はやっぱり執事だよね!?」
クラスの女子2「執事服の王子、見たい!」
怜那「(やっぱりこうなるよね)」
怜那は気づかないが、龍崎が怜那を気遣うような眼差しを向けている。
怜那「(別に、メイドがいいわけじゃないけど)」
桃園「王子、執事やってくれる?」
期待に満ちた眼差し。クラス全員が怜那に注目している。
田村「確かに王子が執事やったら、うちのクラスめっちゃ人気出そう」
桃園「そうだよ! 王子が裏方なんてもったいないし!」
【別に、嫌なわけじゃない】
【それに、みんなの期待を裏切りたくない】
怜那「いいよ。執事、やる」
桃園「本当!?」
怜那「うん」
怜那「(これでいい。みんな、喜んでくれるし)」
周りに合わせて笑顔を作る怜那。
怜那「おかえりなさいませ、お嬢様。……なーんて」
ふざけた感じで言う怜那。きゃー! と歓声が上がる。
楽しそうな教室内で、龍崎だけが複雑そうな表情。
〇放課後・帰り道(怜那、龍崎の二人)
龍崎「……なあ、本当に執事でよかったわけ?」
怜那「えっ?」
龍崎「断れない流れにされてただろ」
心配そうな顔で怜那を見る龍崎。
怜那「(心配、してくれたんだ……)
怜那「……ありがとう。でも、嫌だったわけじゃないよ」
【メイド服なんて恥ずかしい】
【たぶん自分で選べても、私は執事を選んだと思う】
【だから、これでいい】
【……龍崎くんが、私を心配してくれたし】
龍崎「……ふーん」
ちょっと納得がいっていなさそうな顔。
怜那「そ、それより、文化祭の前にテストだよ」
急に龍崎が嫌そうな顔をする。
怜那「前いた学校とは進度とか違うかもしれないし、大変なんじゃないかって……」
龍崎「……正直、このままじゃかなりやばい」
【うちの学校は、テストには厳しい】
【赤点をとれば補習や追加課題が山のようにある】
怜那「(龍崎くん、大丈夫かな)」
龍崎「なあ、鈴原」
怜那「なに?」
龍崎「俺に勉強、教えてくんねえ?」
怜那「……え?」
龍崎「王子は頭もいい! って、女子たちが騒いでるの聞いたんだよ」
怜那「……あ」
【勉強は苦手じゃない】
【人に教える自信はあんまりないけど】
龍崎「鈴原の邪魔したくないし、無理ならいいんだけど」
怜那「いいよ。全然、邪魔とかじゃないから」
龍崎「ありがとな。都合がいい日教えて」
怜那「うん。スケジュール確認する」
怜那がスマホでスケジュールアプリを起動。
龍崎「そういえば、連絡先交換してないよな」
龍崎もスマホを取り出す。
龍崎「LIME、交換しようぜ」
怜那「……うん」
【男の子とこんな風に連絡先交換するの、初めてだ】
〇放課後・空き教室(怜那、龍崎のみ)
勉強会をしている。
【龍崎くんとの勉強会を始めてから、しばらく経った】
【人と一緒に勉強すると、意外と集中できるらしい】
二人とも、集中して問題を解いている。
龍崎「ごめん。ここ、教えてもらっていい?」
シャーペンで数学の問題集を指差す。
怜那「ああ、ここはね……」
〇数時間後
怜那「そろそろ、帰らないと」
壁際の時計を見て、怜那が立ち上がる。
龍崎「……なあ」
怜那「なに?」
龍崎「昨日、文化祭の衣装届いただろ?」
怜那「うん。今日、着たし」
【衣装が届いたってことで、試しに今日、みんなで着てみた】
執事服を着て、きゃーきゃー叫ばれる怜那の回想シーン。
(龍崎はスタッフのため、制服姿)
龍崎「……衣装、教室に保管してあるだろ」
怜那「そうだけど?」
怜那「(龍崎くん、なにが言いたいんだろ)」
龍崎「もう誰もいないだろうし……メイド服、着てみれば?」
怜那「えっ!?」
怜那「(メイド服って……私が?)
真剣な顔をしている龍崎。
龍崎「別に、鈴原がいいならいいんだけど」
怜那「(どうしよう……こんなこと言われるなんて、想像もしてなかった)」
迷っている怜那。
龍崎「俺は、鈴原のメイド姿、見てみたいけど」
怜那の顔が真っ赤になる。
【メイド服なんて柄じゃない】
【別に、着たいとも思ってなかった】
【でも、龍崎くんになら……】
真っ赤な顔で、こくん、と頷く怜那。
昨日と同様、今日も多くの女子が怜那の周りに集まり、一緒に食事をしようと誘っている。
クラスの女子「今日こそ私たちと食べよ!」
クラスの女子2「いや、私たちと……!」
【誘ってくれるのは嬉しい】
【だけどみんな、「王子」っていうキャラを私に求めてるだけ】
【だからちょっと、疲れちゃうんだよね】
怜那「(なんて、贅沢な悩みか)」
中学時代を一瞬思い出す。
髪の毛がロングで今と雰囲気の違う怜那。教室で孤立し、一人で昼食をとっている。
【あの頃と比べたら、全然いい】
龍崎「なあ」
いきなりやってきた龍崎に、女子たちはびっくりする。
龍崎「行くぞ」
怜那「……行く? どこに?」
龍崎「飯」
龍崎にいきなり腕を掴まれ、教室を連れ出されそうになる。慌ててお弁当箱の入った袋を掴む。
クラスの女子たち「あっ、王子……!」
龍崎を怖がりつつも、残念そうな顔をする女子たち。
怜那「みんな、ごめん」
そのまま、龍崎に連れられて教室を出ていく。
〇昼休み・空き教室
怜那、龍崎の他には誰もいない。
龍崎「悪い、いきなり」
怜那「いや、全然。……びっくりはしたけど」
【龍崎くんとは朝、挨拶をした】
【でも、それだけ】
【龍崎くんは教室で私に話しかけようとはしなかった】
怜那「(だから、驚いた)」
少し悩んだような表情になった龍崎が、怜那をじっと見つめる。
龍崎「……王子って、好きでやってんの?」
怜那「えっ?」
龍崎「別に、言いたくないならいいんだけど」
怜那を見る龍崎の目は鋭い。
【ちょっと怖い】
【心の中を覗かれているみたいだ】
とっさに目を逸らし、俯きがちになりながら答える怜那。
怜那「周りが言い出したことだけど……別に、嫌ってわけじゃないよ」
龍崎「そうなのか」
龍崎の表情が柔らかくなる。
怜那「うん。みんなが褒めてくれてるのは分かってるから」
【ただ、少し息苦しいだけ】
【本当の私は全然、王子って柄じゃないのになって】
龍崎「……なら、余計なことしたな」
怜那「え?」
龍崎「なんか、鈴原が無理してるような気がしたから」
怜那「(だから、私を連れ出してくれたの?)」
怜那「(龍崎くん、私を心配してくれたんだ……)」
怜那の頬が赤くなり、それを隠そうと俯くが、髪が短いため上手くいかない。
そんな怜那を見て、くすっと柔らかく笑う龍崎。
龍崎「教室にいる時とは別人だな」
怜那「ど、どういうこと?」
龍崎「ころころ表情が変わる」
怜那「(そんなこと言われたの、初めてだ)」
【なんか恥ずかしい】
【ずっと、気持ちを顔に出せたらなって、そう思ってたはずなのに】
龍崎「……明日からは、いきなり連れ出したりしないから」
ほんの少し寂しそうな顔で微笑む龍崎。
怜那「待って」
龍崎が目を見開く。
どくん、と怜那の鼓動が速くなる。
怜那「(……恥ずかしい)」
怜那「(でも、ちゃんと言わなきゃ)」
【私は気持ちを顔に出すのも、自分の気持ちを言葉にするのも苦手】
【でも、苦手だって思ってるだけじゃなにも変われない】
怜那「さ、誘ってくれて嬉しかった。だからその、できればこれからも……」
怜那の顔が真っ赤になる。龍崎が声を上げて笑う。
龍崎「顔、赤すぎ」
さらに赤くなる怜那の顔。
龍崎「明日からも誘うから」
怜那「……うん」
龍崎「王子のこと奪うなって、女子から睨まれるかもな」
楽しそうに笑う龍崎。
怜那「……でも私、龍崎くんのお世話係だから」
〇授業中(六限目)・教室
田村(学級委員長の男子)「というわけで、うちのクラスの出し物はメイド&執事喫茶に決まりました!」
教室中、拍手。
【文化祭は来月だ】
【定期テストの一週間後っていう、ハードなスケジュール】
怜那「(メイド&執事、か)」
桃園(学級委員長の女子)「衣装はまとめて購入するから、メイドと執事をやる人を決めたいんですけど……」
クラスの女子たちの視線が怜那に集まる。
クラスの女子「王子はやっぱり執事だよね!?」
クラスの女子2「執事服の王子、見たい!」
怜那「(やっぱりこうなるよね)」
怜那は気づかないが、龍崎が怜那を気遣うような眼差しを向けている。
怜那「(別に、メイドがいいわけじゃないけど)」
桃園「王子、執事やってくれる?」
期待に満ちた眼差し。クラス全員が怜那に注目している。
田村「確かに王子が執事やったら、うちのクラスめっちゃ人気出そう」
桃園「そうだよ! 王子が裏方なんてもったいないし!」
【別に、嫌なわけじゃない】
【それに、みんなの期待を裏切りたくない】
怜那「いいよ。執事、やる」
桃園「本当!?」
怜那「うん」
怜那「(これでいい。みんな、喜んでくれるし)」
周りに合わせて笑顔を作る怜那。
怜那「おかえりなさいませ、お嬢様。……なーんて」
ふざけた感じで言う怜那。きゃー! と歓声が上がる。
楽しそうな教室内で、龍崎だけが複雑そうな表情。
〇放課後・帰り道(怜那、龍崎の二人)
龍崎「……なあ、本当に執事でよかったわけ?」
怜那「えっ?」
龍崎「断れない流れにされてただろ」
心配そうな顔で怜那を見る龍崎。
怜那「(心配、してくれたんだ……)
怜那「……ありがとう。でも、嫌だったわけじゃないよ」
【メイド服なんて恥ずかしい】
【たぶん自分で選べても、私は執事を選んだと思う】
【だから、これでいい】
【……龍崎くんが、私を心配してくれたし】
龍崎「……ふーん」
ちょっと納得がいっていなさそうな顔。
怜那「そ、それより、文化祭の前にテストだよ」
急に龍崎が嫌そうな顔をする。
怜那「前いた学校とは進度とか違うかもしれないし、大変なんじゃないかって……」
龍崎「……正直、このままじゃかなりやばい」
【うちの学校は、テストには厳しい】
【赤点をとれば補習や追加課題が山のようにある】
怜那「(龍崎くん、大丈夫かな)」
龍崎「なあ、鈴原」
怜那「なに?」
龍崎「俺に勉強、教えてくんねえ?」
怜那「……え?」
龍崎「王子は頭もいい! って、女子たちが騒いでるの聞いたんだよ」
怜那「……あ」
【勉強は苦手じゃない】
【人に教える自信はあんまりないけど】
龍崎「鈴原の邪魔したくないし、無理ならいいんだけど」
怜那「いいよ。全然、邪魔とかじゃないから」
龍崎「ありがとな。都合がいい日教えて」
怜那「うん。スケジュール確認する」
怜那がスマホでスケジュールアプリを起動。
龍崎「そういえば、連絡先交換してないよな」
龍崎もスマホを取り出す。
龍崎「LIME、交換しようぜ」
怜那「……うん」
【男の子とこんな風に連絡先交換するの、初めてだ】
〇放課後・空き教室(怜那、龍崎のみ)
勉強会をしている。
【龍崎くんとの勉強会を始めてから、しばらく経った】
【人と一緒に勉強すると、意外と集中できるらしい】
二人とも、集中して問題を解いている。
龍崎「ごめん。ここ、教えてもらっていい?」
シャーペンで数学の問題集を指差す。
怜那「ああ、ここはね……」
〇数時間後
怜那「そろそろ、帰らないと」
壁際の時計を見て、怜那が立ち上がる。
龍崎「……なあ」
怜那「なに?」
龍崎「昨日、文化祭の衣装届いただろ?」
怜那「うん。今日、着たし」
【衣装が届いたってことで、試しに今日、みんなで着てみた】
執事服を着て、きゃーきゃー叫ばれる怜那の回想シーン。
(龍崎はスタッフのため、制服姿)
龍崎「……衣装、教室に保管してあるだろ」
怜那「そうだけど?」
怜那「(龍崎くん、なにが言いたいんだろ)」
龍崎「もう誰もいないだろうし……メイド服、着てみれば?」
怜那「えっ!?」
怜那「(メイド服って……私が?)
真剣な顔をしている龍崎。
龍崎「別に、鈴原がいいならいいんだけど」
怜那「(どうしよう……こんなこと言われるなんて、想像もしてなかった)」
迷っている怜那。
龍崎「俺は、鈴原のメイド姿、見てみたいけど」
怜那の顔が真っ赤になる。
【メイド服なんて柄じゃない】
【別に、着たいとも思ってなかった】
【でも、龍崎くんになら……】
真っ赤な顔で、こくん、と頷く怜那。
