颯さんっ。
いくら探してもどこにもいない。
ど、どうしよう……
髪の毛もぐちゃぐちゃでおまけに靴擦れもしている。
髪を下ろして、また探しに行く。
颯さん……。
「あの…私、颯様のことが好きです。付き合ってください。」
私はその声が聞こえてきた途端、嫌な想像が浮かぶ。
いや、きっと。颯さんなわけないよね…。
声のした方に行くと、颯さんらしき人がいた。背中しか見えないけど、颯さんだ。
あはは。嫌な予感的中しちゃったな。
いっつも不安になっちゃう。
なんで不安になっちゃうんだろう。颯さんのことが好き…なわけないよね。
だって、颯さんはクラス一番…いや、学校一番モテ男子なんだから。
そして、こっちに顔を向けている女性の顔が見えない。
―――――花山さん?
顔が見えると、ほっぺを赤くして颯さんへの告白の返事を待っているようだった。
心臓がドクドクとうるさく音を立て始める。
私は踵を返して走った。
もう、靴擦れとか何もかも忘れて、とにかく走った。
きっと私―――――泣いてる。
私、馬鹿だからやっと気づいた。今泣いているのも、颯さんにドキドキするのも、時には不安になったり幸せになったりすることも。全部、全部。
―――颯さんのことが好きだったからだ。
でも…もう遅い。
あんなに可愛い花山さんの告白は断らないに決まっている。
初めて人を好きになったのに。こんなに好きになったのに。
この願いはかなわない。
そう思うと一気に涙が押し寄せてきた。
「もう無理…心が痛くて…涙が止まらない…」
……そっか、そうだよね。こんなに地味な女を好きになるわけないじゃん。
知っていた。知っていたのに。
温かい家族。家に帰ったら「おかえり」って優しく言ってくれる人。それだけで私は幸せだったのに。
…求めすぎたんだ。颯さんと両想いになれたらって。私が……求めすぎたからっ。
―――ドンっ‼
痛っ!
私はしりもちをついてしまう。 誰かとぶつかってしまった。こんな人前で恥ずかしい……
はあ、私はどこまで馬鹿なんだか。
「痛い!あーあ。せっかく買った飲み物がこぼれちゃった。」
顔を上げるとそこにはいかにもチャラそうな男性たちがいた。
その人たちは私を見てにやにやしている。
私は、この人たちが怖く感じた。
「おい。俺、こういう地味な女、好きじゃないんだけど。」
「いや、俺は意外とこういうのもいいと思うけど。」
そういって何かぶつぶつ話し始めた。
なんて言っているのか聞こえない……
「ねえ、飲み物がこぼれちゃった。どうしてくれんの?」
うわ…私がぶつかっちゃったから、その人の服がびしゃびしゃだ。
鼻をすすって、涙を拭いてその人と向き合う。
「……すみません。クリーニング代とジュース代を払います。」
すぐに立ち上がってお財布を出して払おうとする。
ちゃんと弁償しないと。
「いやいや、いいよ。払わなくて。」
え…払わなくていいの…?
「だから、一緒に俺たちと遊びにいかない?」
「え…?」
遊ぶって、私、颯さんを探しているのに。
「ごめんなさい。人を探しているので。」
そういって回れ右をして歩き出す。
こんなことをしている場合じゃない。
その時、突然後ろから腕をつかまれた。
「逃がさないよ?」
後ろを振り返ると、さっきの人が私の腕をつかんでいた。
「いやっ、離してっ‼」
その捕まれた手は、私にとってすごく怖く感じた。
誰か…助けて……‼
「なにしてんだよ。」
この声はっ…!
「颯さん……。」
颯さんはその人の腕をつかんでいる。
そのまま私をかばうように前に出てくれた。
「な、なんだてめぇ。」
その人は頭に血が上っている。
「あ?消えろっつってんだよ。わかんねぇのか?」
その人は颯さんが怖くなったのか、そのまま逃げてしまった。
「大丈夫か?」
颯さんは、花山さんという彼女がいるはずなのに。
いつも、こうやって私を助けてくれる。
颯さんは、どこにも行ってほしくない。私のそばにいてほしい。
でも、これは叶わないただの私のわがまま。
すると颯さんは私のそばでしゃがんだ。
そのまま、私の視界はぐるっと動いた。
私の背中と足に颯さんの手がある。
これは―――お姫様抱っこ⁉
「は、離してください…」
こんな人がいる前でお姫様抱っこなんて。
「絶対離さない。」
「だって私、こんなことされたことなくて……」
は、はずかしい。
そのまま私は疲れていたのか深い眠りについてしまった。
「うーん……」
眠たい目をこすって目を開ける。
ここ…どこ?
颯さんの部屋…?
ベットから颯さんのにおいがしてきて颯さんに包まれているかのようなそんな感覚になる。
いや、何を考えているんだ私は。
そういえば私、なんで颯さんの部屋で寝ているんだ?
昨日…何していたっけ?
あ、颯さんにお姫様抱っこされてそのまま寝てしまったんだ。
ベットから立つと、足に何かしらの違和感を感じた。目を向けると、昨日靴擦れしたところに絆創膏が貼られていて手当てされている。
そのまま私の部屋へ向かって、着替える。
ふと、鏡が目に入った。
うわ…すごく目が腫れている。
昨日、たくさん泣いたからな。
階段を下りてリビングに行くと、颯さんが教科書を開いて勉強をしている。
気まずい……
このまま、部屋に戻ろう。
―――ガタッ
……!
私が動いた瞬間に音が鳴ってしまった。
「リサ?」
ば、ばれたか…
しぶしぶ姿を見せる。
颯さんと目を合わせると無意識に胸が張り裂けるような感覚になる。
その途端に視界がゆがむ。
颯さんを見ると、泣いてしまう。
ダメだ…。
こんな顔を見られたくないっ…。
そう思って逃げようとする。
「リサ‼」
腕をつかまれる。
「ごめんなさい、私っ……」
―――――ドンっ
え……?
これ…壁ドン⁉
私は少しパニック。
「で?なんでこんなに目が腫れているの?」
「…寝すぎたから?」
うそ。本当は泣いたから。
「じゃあ、なんでリサの場所が分かったと思う?」
それって、颯さんとはぐれたときにどうして私を見つけてくれたかってことだよね。
「え…わからない」
「はあ、答え合わせな」
ど、どういうことかわからない……
「まず、リサがこんなに目が腫れているのは泣いたからじゃないの?なあ?」
ダメだ、もうこんな嘘じゃダメ。
本当のことを言わないと。
「はい…そうです。」
「じゃあ、なんでリサの場所が分かったかって言うと、お前、告白したとこ見たろ。」
「えっ……?」
「そりゃあ、あんなに突っ走っていったらわかるっつーの。」
迷惑…だったかな?
私、颯さんの邪魔でしかない。
急に真剣な顔をして言う颯さん。
やっぱり、告白されていた人は颯さんだったんだ。
「ご、ごめんなさい…」
やっぱり、二人とも付き合ったんだ。
もう、あの楽しかった日常には戻れないのかな?
私は、好きな人の恋愛をずっと見ていないといけないのかな…?
そんなの、つらいよ……。
「ううっ、ふうっ…」
そう思うと涙が出てきてしまった。
「颯さんには彼女がいるのに、ごめんなさい…。」
本当に、ごめんなさい…。
「は?彼女なんていないし。」
ダメってわかっているのに。もう叶わないってわかっているのに。まだ期待をしてしまっている私がいる。
ねえ、期待していいの?
「だから、俺は花山からの告白を断った。」
「…え?」
「好きな人がいるからって。」
好きな…人…?
あはは…また、振られちゃったな。
こんなに地味な女、モテ男子との恋なんて叶うはずない。
「その子はさ、いっつも危なっかしくて。」
こんなに愛しそうに好きな人の好きな人を語る姿なんて見たくない……
でも、この気持ちは一生死ぬまで隠すんだから。
「へ、へえー。」
「で、その子は自分に自信がなくて。でも、本当はすごく可愛い。」
もう…聞きたくないんだって。
「そう…なんだ。」
…あはは。
「それでさ、おまけに性格も可愛すぎる。」
はあ、その子はどれだけ可愛いんだろう。颯さんが言うくらいだから、相当可愛いんだろうな。
私の初恋も、これで終わり。
さようなら。私のはつこ……
「リサのことが好き」
「…え?」
今…なんて言った?
いや、聞き間違いだよね。私の耳、都合よく聞こえるようになっているみたい。
「ああ、幻聴が聞こえちゃった。」
はは…。私の耳が私を慰めてくれたのかな?
「はあ、もう。これだから馬鹿は…。」
「ん?なんて言ったの?」
「じゃあ、はっきりと言う。俺はリサのことが好き。夢じゃないし、幻聴でもないから。」
颯さんはしっかりと目を見て言ってくれる。
夢じゃ…ないんだよね。
そう思うとびっくりして私はまた泣き出してしまう。
「ふうっ。うそだっ。こんな地味な私のことを好きになるわけっ…」
信じられない。
「はあ、面倒くさい。」
すると颯さんの顔が急に近づいてきて、私のおでこに柔らかいものが当たった。
「ヘっ……?」
今…キスしたっ⁉
颯さんの目を見ると、これまでに見たことのないほど熱を帯びて愛しそうに見ていた。
「これで分かった?」
「うんっ。」
「リサの答えを聞かせて。」
私の答え。それは。
「私ね、ずーっとさ。コンプレックスは見た目が地味なことだったんだ。」
颯さんは「うん」と優しく相づちを打ってくれている。
「でもね、地味な私でも好きでいてくれている人がいる。だからね。」
そう、私はこのコンプレックスが嫌いだった。
でも颯さんは、そんな私を好きって言ってくれた。
「私も好きだよ。颯さん。」
ふふっ。
私たちは顔が徐々に近づいてそして―――優しく口づけを重ねあった。
これって両想いってことだよね。
両想いになるって、相当奇跡で感謝しなきゃいけない事なんだな。
最初でこの恋はずっといつまでも続いていく恋。
優しくて楽しくてドキドキしてこんなに幸せなんてこと、あっていいのかな?
いくら探してもどこにもいない。
ど、どうしよう……
髪の毛もぐちゃぐちゃでおまけに靴擦れもしている。
髪を下ろして、また探しに行く。
颯さん……。
「あの…私、颯様のことが好きです。付き合ってください。」
私はその声が聞こえてきた途端、嫌な想像が浮かぶ。
いや、きっと。颯さんなわけないよね…。
声のした方に行くと、颯さんらしき人がいた。背中しか見えないけど、颯さんだ。
あはは。嫌な予感的中しちゃったな。
いっつも不安になっちゃう。
なんで不安になっちゃうんだろう。颯さんのことが好き…なわけないよね。
だって、颯さんはクラス一番…いや、学校一番モテ男子なんだから。
そして、こっちに顔を向けている女性の顔が見えない。
―――――花山さん?
顔が見えると、ほっぺを赤くして颯さんへの告白の返事を待っているようだった。
心臓がドクドクとうるさく音を立て始める。
私は踵を返して走った。
もう、靴擦れとか何もかも忘れて、とにかく走った。
きっと私―――――泣いてる。
私、馬鹿だからやっと気づいた。今泣いているのも、颯さんにドキドキするのも、時には不安になったり幸せになったりすることも。全部、全部。
―――颯さんのことが好きだったからだ。
でも…もう遅い。
あんなに可愛い花山さんの告白は断らないに決まっている。
初めて人を好きになったのに。こんなに好きになったのに。
この願いはかなわない。
そう思うと一気に涙が押し寄せてきた。
「もう無理…心が痛くて…涙が止まらない…」
……そっか、そうだよね。こんなに地味な女を好きになるわけないじゃん。
知っていた。知っていたのに。
温かい家族。家に帰ったら「おかえり」って優しく言ってくれる人。それだけで私は幸せだったのに。
…求めすぎたんだ。颯さんと両想いになれたらって。私が……求めすぎたからっ。
―――ドンっ‼
痛っ!
私はしりもちをついてしまう。 誰かとぶつかってしまった。こんな人前で恥ずかしい……
はあ、私はどこまで馬鹿なんだか。
「痛い!あーあ。せっかく買った飲み物がこぼれちゃった。」
顔を上げるとそこにはいかにもチャラそうな男性たちがいた。
その人たちは私を見てにやにやしている。
私は、この人たちが怖く感じた。
「おい。俺、こういう地味な女、好きじゃないんだけど。」
「いや、俺は意外とこういうのもいいと思うけど。」
そういって何かぶつぶつ話し始めた。
なんて言っているのか聞こえない……
「ねえ、飲み物がこぼれちゃった。どうしてくれんの?」
うわ…私がぶつかっちゃったから、その人の服がびしゃびしゃだ。
鼻をすすって、涙を拭いてその人と向き合う。
「……すみません。クリーニング代とジュース代を払います。」
すぐに立ち上がってお財布を出して払おうとする。
ちゃんと弁償しないと。
「いやいや、いいよ。払わなくて。」
え…払わなくていいの…?
「だから、一緒に俺たちと遊びにいかない?」
「え…?」
遊ぶって、私、颯さんを探しているのに。
「ごめんなさい。人を探しているので。」
そういって回れ右をして歩き出す。
こんなことをしている場合じゃない。
その時、突然後ろから腕をつかまれた。
「逃がさないよ?」
後ろを振り返ると、さっきの人が私の腕をつかんでいた。
「いやっ、離してっ‼」
その捕まれた手は、私にとってすごく怖く感じた。
誰か…助けて……‼
「なにしてんだよ。」
この声はっ…!
「颯さん……。」
颯さんはその人の腕をつかんでいる。
そのまま私をかばうように前に出てくれた。
「な、なんだてめぇ。」
その人は頭に血が上っている。
「あ?消えろっつってんだよ。わかんねぇのか?」
その人は颯さんが怖くなったのか、そのまま逃げてしまった。
「大丈夫か?」
颯さんは、花山さんという彼女がいるはずなのに。
いつも、こうやって私を助けてくれる。
颯さんは、どこにも行ってほしくない。私のそばにいてほしい。
でも、これは叶わないただの私のわがまま。
すると颯さんは私のそばでしゃがんだ。
そのまま、私の視界はぐるっと動いた。
私の背中と足に颯さんの手がある。
これは―――お姫様抱っこ⁉
「は、離してください…」
こんな人がいる前でお姫様抱っこなんて。
「絶対離さない。」
「だって私、こんなことされたことなくて……」
は、はずかしい。
そのまま私は疲れていたのか深い眠りについてしまった。
「うーん……」
眠たい目をこすって目を開ける。
ここ…どこ?
颯さんの部屋…?
ベットから颯さんのにおいがしてきて颯さんに包まれているかのようなそんな感覚になる。
いや、何を考えているんだ私は。
そういえば私、なんで颯さんの部屋で寝ているんだ?
昨日…何していたっけ?
あ、颯さんにお姫様抱っこされてそのまま寝てしまったんだ。
ベットから立つと、足に何かしらの違和感を感じた。目を向けると、昨日靴擦れしたところに絆創膏が貼られていて手当てされている。
そのまま私の部屋へ向かって、着替える。
ふと、鏡が目に入った。
うわ…すごく目が腫れている。
昨日、たくさん泣いたからな。
階段を下りてリビングに行くと、颯さんが教科書を開いて勉強をしている。
気まずい……
このまま、部屋に戻ろう。
―――ガタッ
……!
私が動いた瞬間に音が鳴ってしまった。
「リサ?」
ば、ばれたか…
しぶしぶ姿を見せる。
颯さんと目を合わせると無意識に胸が張り裂けるような感覚になる。
その途端に視界がゆがむ。
颯さんを見ると、泣いてしまう。
ダメだ…。
こんな顔を見られたくないっ…。
そう思って逃げようとする。
「リサ‼」
腕をつかまれる。
「ごめんなさい、私っ……」
―――――ドンっ
え……?
これ…壁ドン⁉
私は少しパニック。
「で?なんでこんなに目が腫れているの?」
「…寝すぎたから?」
うそ。本当は泣いたから。
「じゃあ、なんでリサの場所が分かったと思う?」
それって、颯さんとはぐれたときにどうして私を見つけてくれたかってことだよね。
「え…わからない」
「はあ、答え合わせな」
ど、どういうことかわからない……
「まず、リサがこんなに目が腫れているのは泣いたからじゃないの?なあ?」
ダメだ、もうこんな嘘じゃダメ。
本当のことを言わないと。
「はい…そうです。」
「じゃあ、なんでリサの場所が分かったかって言うと、お前、告白したとこ見たろ。」
「えっ……?」
「そりゃあ、あんなに突っ走っていったらわかるっつーの。」
迷惑…だったかな?
私、颯さんの邪魔でしかない。
急に真剣な顔をして言う颯さん。
やっぱり、告白されていた人は颯さんだったんだ。
「ご、ごめんなさい…」
やっぱり、二人とも付き合ったんだ。
もう、あの楽しかった日常には戻れないのかな?
私は、好きな人の恋愛をずっと見ていないといけないのかな…?
そんなの、つらいよ……。
「ううっ、ふうっ…」
そう思うと涙が出てきてしまった。
「颯さんには彼女がいるのに、ごめんなさい…。」
本当に、ごめんなさい…。
「は?彼女なんていないし。」
ダメってわかっているのに。もう叶わないってわかっているのに。まだ期待をしてしまっている私がいる。
ねえ、期待していいの?
「だから、俺は花山からの告白を断った。」
「…え?」
「好きな人がいるからって。」
好きな…人…?
あはは…また、振られちゃったな。
こんなに地味な女、モテ男子との恋なんて叶うはずない。
「その子はさ、いっつも危なっかしくて。」
こんなに愛しそうに好きな人の好きな人を語る姿なんて見たくない……
でも、この気持ちは一生死ぬまで隠すんだから。
「へ、へえー。」
「で、その子は自分に自信がなくて。でも、本当はすごく可愛い。」
もう…聞きたくないんだって。
「そう…なんだ。」
…あはは。
「それでさ、おまけに性格も可愛すぎる。」
はあ、その子はどれだけ可愛いんだろう。颯さんが言うくらいだから、相当可愛いんだろうな。
私の初恋も、これで終わり。
さようなら。私のはつこ……
「リサのことが好き」
「…え?」
今…なんて言った?
いや、聞き間違いだよね。私の耳、都合よく聞こえるようになっているみたい。
「ああ、幻聴が聞こえちゃった。」
はは…。私の耳が私を慰めてくれたのかな?
「はあ、もう。これだから馬鹿は…。」
「ん?なんて言ったの?」
「じゃあ、はっきりと言う。俺はリサのことが好き。夢じゃないし、幻聴でもないから。」
颯さんはしっかりと目を見て言ってくれる。
夢じゃ…ないんだよね。
そう思うとびっくりして私はまた泣き出してしまう。
「ふうっ。うそだっ。こんな地味な私のことを好きになるわけっ…」
信じられない。
「はあ、面倒くさい。」
すると颯さんの顔が急に近づいてきて、私のおでこに柔らかいものが当たった。
「ヘっ……?」
今…キスしたっ⁉
颯さんの目を見ると、これまでに見たことのないほど熱を帯びて愛しそうに見ていた。
「これで分かった?」
「うんっ。」
「リサの答えを聞かせて。」
私の答え。それは。
「私ね、ずーっとさ。コンプレックスは見た目が地味なことだったんだ。」
颯さんは「うん」と優しく相づちを打ってくれている。
「でもね、地味な私でも好きでいてくれている人がいる。だからね。」
そう、私はこのコンプレックスが嫌いだった。
でも颯さんは、そんな私を好きって言ってくれた。
「私も好きだよ。颯さん。」
ふふっ。
私たちは顔が徐々に近づいてそして―――優しく口づけを重ねあった。
これって両想いってことだよね。
両想いになるって、相当奇跡で感謝しなきゃいけない事なんだな。
最初でこの恋はずっといつまでも続いていく恋。
優しくて楽しくてドキドキしてこんなに幸せなんてこと、あっていいのかな?


