エンドロールを巻き戻せ

 私はその出来事があってから、たかが外れたように、夜はお酒を飲むようになった。
飲まないと眠れないのだ。
眠れないとまた、一彩とあの綺麗な女の人が出てきて頭がおかしくなりそうになる。

 香奈の言っていた通り、一彩の新しい好きな人なんて見なければよかった。
想像するのと、実際に目で見てしまうのはダメージが全然違う。
 別に好きでもない、お酒を飲んで胃がムカムカして泣きながら吐き出すのを毎晩繰り返していた。
完全に私は、失恋を攻略するどころか、どつぼにハマって身動きできなくなっていた。

 神様が本当にいるなら助けてほしい。
どうしたら私は一彩への思いを断ち切る事ができるのか。
思い出したくないのに、思い出してしまう。
一彩の笑顔や、しぐさ、私を呼ぶ声。
私を幸福にしてくれた、その全てが今は私の胸に突き刺さる。
 それを誤魔化す為に、私は今日もアルコールで気を紛らわす。

 その日も私は、一人で家の近くのバーで飲んでいた。
私はいつの間にか眠っていたのか、気がつくと誰かにゆり起こされる。

「すみません。お客さん閉店です。」

 もう、そんな時間?
私は痛い頭を抱えて、何とか一人、お店の外へ出る。
外にでた瞬間、冷たい風が私の体を吹き抜ける。
もう、冬になるのだ。

『瑞稀、今年の年末は北海道行かない?綺麗な雪見たくない?』

『え〜寒そう!でも良いね!私北海道って行った事ない!』

『なっ!決まりな!絶対行こうな!』

 お盆休みに、デートした時に一彩が言ったのだ。つい三ヶ月前の話しだ。
一彩はもう忘れてしまったんだろうか。

「嘘つき、、、」

 私は帰るつもりだったが、何故か家に足が向かなかった。
誰もいない部屋に帰るのが憂鬱だった。
本当に一人だと感じるから。

 けれど、今は深夜2時、こんな時間に家の近くでやっているお店はもう殆どない。
酔いのまわっている私は、一人でトボトボあてもなく、歩いていく。
私の住んでる所は、東京と言っても東京の外れなので、夜になると殆ど人通りはまばらだ。

 どのくらい歩いていたのか自分でもわからない。酔いをさますようにただ足を動かしていた。
けれど、全然酔いがさめる気配はない。
私は急にふと思った。

(こんな所に路地があったんだ、、、)

 いつも通っていた道なのに気が付かなかった。
私が狭い路地を覗くと、暗い路地の奥にぼわーっとオレンジ色の明かりが灯っていた。
私は、何故かその明かりが私にとても主張しているように見えた。

(何だろう)

そう思って明かりの方へ足を進める。行ってみると、明かりの横に小さな看板が下げてあった。

『BER nostalgia』

「バー、、、ノスタルジア」

 私は声に出して読んでみる。
こんな所に隠れ家的なバーがあったなんて、知らなかった。
明かりがついているって事は、まだやってるんだよね、、、。
いつもだったら、一人で初めてのバーなんて行かないけれど、私は吸い寄せられるように、そのバーへと入っていく。

 カランッ

 扉を開けると、小さな鈴の音がした。