「しょ、昭平さん! 救急車、直ぐに駆けつけるそうです!」
「AED、取って来たわ! これを開けば良いのよね!?」
「ああ、そうだ! 俺は胸骨圧迫を止められない! 音声案内が流れるから、落ち着いてやれ!」
「わ、分かった。頑張るわ!」
続々と人が帰って来て次の行動に移る。
救急要請にかかる時間は約2分。
AEDは片道1分程度の場所に設置されるのが目安だ。
農園という立地から、少し遠かったようだが……。
車を飛ばしたのだろう。
思ったよりも早く戻ってきてくれた。
お袋さんは涙を流して狼狽えているが、俺を医者だと知っているからだろう。
信頼したように見つめている。
両指を祈るように組みながら、「お願い、助かって」と。
「準備出来たわ!」
「――よし!」
俺はすかさずパッドを貼り付け、AEDの解析結果を待つ。
すると『電気ショックが必要です』と音声が流れた。
やはり、か!
AEDは心疾患の全てに対応し電気ショックを流す訳ではない。
だが心筋梗塞には非常に有効だ。
「全員、離れろ!」
全員が離れているのを確認し、電気ショックを流すボタンを押す。
バンッと、親父さんの身体が軽く跳ねた。
そして直ちに胸骨圧迫を再開する。
「ね、ねえ! もう助かったんじゃないの!? AEDはどうすれば良い!?」
「まだだ! 病院で処置するまで、ずっと続ける! AEDもそのままで良い! 以後は2分毎に電気ショックの必要性を解析してくれる! 絶対に電源は切るな!」
「わ、分かったわ!……お願い、お父さんを助けて。こんな強引な人でも……私を大切に想ってくれる、たった1人のお父さんなの」
「――全力を尽くす!」
医者として、絶対に助けるなんて……。
間違っても言えない。
だが医者としても人間としても――全力を尽くすことは誓う。
それが俺の仕事に対するプライド。
そして最悪の不幸に陥らせないという、信念があるからな。
救急隊は、予想通り9分程度で到着した。
問題はこの後だ。
「――そうですか、分かりました」
そう、救急車に搬入された後だ。
救急隊の到着までは、平均9分。
だが救急への入電から病院収容までの平均時間は、40分から42分。
最悪の差として、33分間を搬送先を決める時間と搬送時間に費やすことになる。
案の定、搬送先の病院が直ぐには決まらないようだった。
お袋さんや雪華さんは、一向に発進しない救急車を見てヤキモキしている。
胸骨圧迫を救急隊員に引き継いだ俺は――スマホで一本の通話をかけていた。
「行けますか!? ありがとうございます! はい、直ぐに救急科へ入電があると思います」
通話を切ると、俺は搬送先を探している救急隊員へと声をかける。
「俺は東林大学病院の医者です! 今、伝手で近隣の病院から受け入れ可能と返事を貰いました! 病院名は――」
最初は煩わしそうにしていた救急隊員だったが、試しに電話してみて、事実であったのを確認したようだ。
受け入れ可能の返事が返って来たのが窺える。
そうして救急車は搬送先の病院へ向け走り出す。
これならば病院収容して初期治療を行うまでの平均時間は大幅に短縮出来そうだ。
後は病院到着後、カテーテル室への入室がスムーズに行くよう、俺の伝手が活きることを願うばかりだ――。
「AED、取って来たわ! これを開けば良いのよね!?」
「ああ、そうだ! 俺は胸骨圧迫を止められない! 音声案内が流れるから、落ち着いてやれ!」
「わ、分かった。頑張るわ!」
続々と人が帰って来て次の行動に移る。
救急要請にかかる時間は約2分。
AEDは片道1分程度の場所に設置されるのが目安だ。
農園という立地から、少し遠かったようだが……。
車を飛ばしたのだろう。
思ったよりも早く戻ってきてくれた。
お袋さんは涙を流して狼狽えているが、俺を医者だと知っているからだろう。
信頼したように見つめている。
両指を祈るように組みながら、「お願い、助かって」と。
「準備出来たわ!」
「――よし!」
俺はすかさずパッドを貼り付け、AEDの解析結果を待つ。
すると『電気ショックが必要です』と音声が流れた。
やはり、か!
AEDは心疾患の全てに対応し電気ショックを流す訳ではない。
だが心筋梗塞には非常に有効だ。
「全員、離れろ!」
全員が離れているのを確認し、電気ショックを流すボタンを押す。
バンッと、親父さんの身体が軽く跳ねた。
そして直ちに胸骨圧迫を再開する。
「ね、ねえ! もう助かったんじゃないの!? AEDはどうすれば良い!?」
「まだだ! 病院で処置するまで、ずっと続ける! AEDもそのままで良い! 以後は2分毎に電気ショックの必要性を解析してくれる! 絶対に電源は切るな!」
「わ、分かったわ!……お願い、お父さんを助けて。こんな強引な人でも……私を大切に想ってくれる、たった1人のお父さんなの」
「――全力を尽くす!」
医者として、絶対に助けるなんて……。
間違っても言えない。
だが医者としても人間としても――全力を尽くすことは誓う。
それが俺の仕事に対するプライド。
そして最悪の不幸に陥らせないという、信念があるからな。
救急隊は、予想通り9分程度で到着した。
問題はこの後だ。
「――そうですか、分かりました」
そう、救急車に搬入された後だ。
救急隊の到着までは、平均9分。
だが救急への入電から病院収容までの平均時間は、40分から42分。
最悪の差として、33分間を搬送先を決める時間と搬送時間に費やすことになる。
案の定、搬送先の病院が直ぐには決まらないようだった。
お袋さんや雪華さんは、一向に発進しない救急車を見てヤキモキしている。
胸骨圧迫を救急隊員に引き継いだ俺は――スマホで一本の通話をかけていた。
「行けますか!? ありがとうございます! はい、直ぐに救急科へ入電があると思います」
通話を切ると、俺は搬送先を探している救急隊員へと声をかける。
「俺は東林大学病院の医者です! 今、伝手で近隣の病院から受け入れ可能と返事を貰いました! 病院名は――」
最初は煩わしそうにしていた救急隊員だったが、試しに電話してみて、事実であったのを確認したようだ。
受け入れ可能の返事が返って来たのが窺える。
そうして救急車は搬送先の病院へ向け走り出す。
これならば病院収容して初期治療を行うまでの平均時間は大幅に短縮出来そうだ。
後は病院到着後、カテーテル室への入室がスムーズに行くよう、俺の伝手が活きることを願うばかりだ――。
