そうして調整すること、約2週間後。
うだるような暑さと時間も考慮し、ダブルデートは同じく品川にある水族館ということになった。
今回は現地での集合ということになっている。
俺たちの後ろをついてくるということだから、駅まで迎えに行くことはない。
いつも通りにしてくれとの話だ。
いつも通りと言われても……。
一緒に外出するのすら、前回の挨拶が初めてだったんだがな。
「それじゃあ、入りましょうか」
ご両親が俺たちの姿を補足したという連絡を受け、行動を開始する。
手を繋ぐというプランもあったのだが、それは偽装ではやり過ぎではないかという俺の意見から、消えた。
その分、良いタイミングで川口さんが身体的スキンシップを取ってくることになっている。
その辺は任せた。
交際経験がない俺には、難し過ぎる。
「それにしても……水族館ってのは、こんな都会にもあるんだな」
「東京の水族館、行ったことないの?」
「東京どころか、人生初だ」
「う、嘘でしょ!?」
信じられないものを見るような目を向けるな。
それ程、珍しいものでもないだろう。
両親が開業医で忙しければ、十分にある。
会場へ入り、案内に従いチケット売り場に行く。
「に、2500円だと!?」
水に入った魚を見る入場料が、2500円!?
1人暮らしの水道代平均ですら、2000円もしないんだぞ!?
人が1ヶ月水を使って生きるよりも、ほんの数時間、水中の生物を見る価値の方が高いとでも言うつもりか!?
出鱈目だ!
「後で7割3分返すから! 券売機なんだから、1回は自分の財布から入れて!」
「う、うむ……」
そうだ。
これは後で帰って来る。
だから……怖れることはない!
ブルブルと手が震えて、上手く千円札が通らない。
これは、交通系ICカードにチャージしているのと同じ。
同じなんだ……。
怖れるな、俺!
「ああ!?」
遂に吸いこまれてしまった、俺の3千円が……。
鉛のように重い手で、大人1人のボタンを押す。
すると、500円玉がお釣りとして落ちてきた。
サッと、誰かに盗られる前に財布へと仕舞う。
「多分、ここもお父さんは見ている。後で私の分は全額返すから……。1回、私の分のチケットも買うふりをしておいて」
「な、なんだと……」
「男は女に奢るべきって、古い考えの持ち主なのよ……」
「なんて男女平等を履き違えた意見だ! それは経済的に男が支配したいだけだろう!? 女性に稼ぐ能力がないと、侮辱するつもりか!?」
「そう言うあんたは、ケチなだけでしょ? ほら、早く」
クソ……。
この上500円玉に、もう2枚も千円札を入れろと言うのか?
手汗が凄いことになっている。
だが俺の親に会ってもらい、結婚圧力を解消してもらう為だ。
この一時的な犠牲も、やむを得ん!
「喰らえ!」
500円玉の重りが消え、そして2枚の札が吸いこまれて消失する。
俺は1周回って空笑いをしてしまった。
足下に力が入らない……。
そんな俺の腕に、川口さんが抱きついて運んでくれる。
傍目からは、カップルが仲良く歩いているように見えることだろう。
……実際は、歩行介助をしてもらっているのだがな。
半券を切ってもらい、いよいよ入場する。
金を払った分、元を取るつもりで楽しまねば……。
最初の展示は、壁際にいくつもの小型水槽が点在する部屋だった。
「小型魚か……。ジャブってヤツだな」
「可愛い~! なに、この子! 桜の花みたい!」
確かに、水槽の中に入っている魚は可愛い。
癒やされる。
だが……それ以上に、進行ルートが定められていないのが苛立つ。
この規則性のなさが、許せん。
キチッと管理されたルートがないと、割り込まれて効率が悪い。
割り込んできたカップルに、チッと舌打ちをしそうになる。
マズいと思い後方を振り返ると、ご両親は確かに居た。
だが、あちらはあちらで楽しんでいる。
もっと獲物を狙う鷹のような瞳で、穿った見方をされているかと思っていたが……。
純粋に、夫婦でデートを楽しんでいそうだ。
そのまま歩みを進めて行くと――開けた場所に出た。
急に大きな水槽や分岐にぶち当たる。
「これは、どうしたら……」
「こっちから行って見ましょう」
「あ、ああ……」
なんだ?
かつてない程、頼りになるじゃないか。
俺に馬乗りになって、頭をガツガツと揺すっていたり……。
部屋の大部分を占拠してダラダラとアイスを喰っているヤツと、同一人物とは思えん。
これが、仕事程にオンモードではないが、余所行きの姿というものか。
女は皆が女優だと、以前に川口さんが言っていたのは嘘ではないようだな。
「ぅおおお!? ききき、恐竜!?」
突如として自分の頭上、ほんの僅かを巨大な生物が通過していった!
目で追えば、ノコギリのようなものが着いている!
なんだ、あれは!?
いや、なんだここは!?
うだるような暑さと時間も考慮し、ダブルデートは同じく品川にある水族館ということになった。
今回は現地での集合ということになっている。
俺たちの後ろをついてくるということだから、駅まで迎えに行くことはない。
いつも通りにしてくれとの話だ。
いつも通りと言われても……。
一緒に外出するのすら、前回の挨拶が初めてだったんだがな。
「それじゃあ、入りましょうか」
ご両親が俺たちの姿を補足したという連絡を受け、行動を開始する。
手を繋ぐというプランもあったのだが、それは偽装ではやり過ぎではないかという俺の意見から、消えた。
その分、良いタイミングで川口さんが身体的スキンシップを取ってくることになっている。
その辺は任せた。
交際経験がない俺には、難し過ぎる。
「それにしても……水族館ってのは、こんな都会にもあるんだな」
「東京の水族館、行ったことないの?」
「東京どころか、人生初だ」
「う、嘘でしょ!?」
信じられないものを見るような目を向けるな。
それ程、珍しいものでもないだろう。
両親が開業医で忙しければ、十分にある。
会場へ入り、案内に従いチケット売り場に行く。
「に、2500円だと!?」
水に入った魚を見る入場料が、2500円!?
1人暮らしの水道代平均ですら、2000円もしないんだぞ!?
人が1ヶ月水を使って生きるよりも、ほんの数時間、水中の生物を見る価値の方が高いとでも言うつもりか!?
出鱈目だ!
「後で7割3分返すから! 券売機なんだから、1回は自分の財布から入れて!」
「う、うむ……」
そうだ。
これは後で帰って来る。
だから……怖れることはない!
ブルブルと手が震えて、上手く千円札が通らない。
これは、交通系ICカードにチャージしているのと同じ。
同じなんだ……。
怖れるな、俺!
「ああ!?」
遂に吸いこまれてしまった、俺の3千円が……。
鉛のように重い手で、大人1人のボタンを押す。
すると、500円玉がお釣りとして落ちてきた。
サッと、誰かに盗られる前に財布へと仕舞う。
「多分、ここもお父さんは見ている。後で私の分は全額返すから……。1回、私の分のチケットも買うふりをしておいて」
「な、なんだと……」
「男は女に奢るべきって、古い考えの持ち主なのよ……」
「なんて男女平等を履き違えた意見だ! それは経済的に男が支配したいだけだろう!? 女性に稼ぐ能力がないと、侮辱するつもりか!?」
「そう言うあんたは、ケチなだけでしょ? ほら、早く」
クソ……。
この上500円玉に、もう2枚も千円札を入れろと言うのか?
手汗が凄いことになっている。
だが俺の親に会ってもらい、結婚圧力を解消してもらう為だ。
この一時的な犠牲も、やむを得ん!
「喰らえ!」
500円玉の重りが消え、そして2枚の札が吸いこまれて消失する。
俺は1周回って空笑いをしてしまった。
足下に力が入らない……。
そんな俺の腕に、川口さんが抱きついて運んでくれる。
傍目からは、カップルが仲良く歩いているように見えることだろう。
……実際は、歩行介助をしてもらっているのだがな。
半券を切ってもらい、いよいよ入場する。
金を払った分、元を取るつもりで楽しまねば……。
最初の展示は、壁際にいくつもの小型水槽が点在する部屋だった。
「小型魚か……。ジャブってヤツだな」
「可愛い~! なに、この子! 桜の花みたい!」
確かに、水槽の中に入っている魚は可愛い。
癒やされる。
だが……それ以上に、進行ルートが定められていないのが苛立つ。
この規則性のなさが、許せん。
キチッと管理されたルートがないと、割り込まれて効率が悪い。
割り込んできたカップルに、チッと舌打ちをしそうになる。
マズいと思い後方を振り返ると、ご両親は確かに居た。
だが、あちらはあちらで楽しんでいる。
もっと獲物を狙う鷹のような瞳で、穿った見方をされているかと思っていたが……。
純粋に、夫婦でデートを楽しんでいそうだ。
そのまま歩みを進めて行くと――開けた場所に出た。
急に大きな水槽や分岐にぶち当たる。
「これは、どうしたら……」
「こっちから行って見ましょう」
「あ、ああ……」
なんだ?
かつてない程、頼りになるじゃないか。
俺に馬乗りになって、頭をガツガツと揺すっていたり……。
部屋の大部分を占拠してダラダラとアイスを喰っているヤツと、同一人物とは思えん。
これが、仕事程にオンモードではないが、余所行きの姿というものか。
女は皆が女優だと、以前に川口さんが言っていたのは嘘ではないようだな。
「ぅおおお!? ききき、恐竜!?」
突如として自分の頭上、ほんの僅かを巨大な生物が通過していった!
目で追えば、ノコギリのようなものが着いている!
なんだ、あれは!?
いや、なんだここは!?
