飴ちゃん食べる?~よろしく焼肉ホスト部♡

 3人組の姿が消えると、生徒たちは何事もなかったかのように再び動き出す。しばらく呆然としながらその光景を眺めていたけれど、はっとして私も動く。

 玄関に着き、ローファーを上靴に履き替えると、担任となる男の先生が迎えに来てくれた。色白で、黒髪短髪。そして眼鏡をかけている。この高校では浮いている、とても真面目そうでさわやかな雰囲気の先生だった。年齢は、私のお父様と同じくらいの40歳ぐらい?かな。

「クラスの担任の、新庄です。よろしくお願いしますね! 何か困ったことがあればすぐに言ってください」

 新庄先生は微笑みながら、優しく穏やかな口調でそう言った。

「ありがとうございます! よろしくお願いします!」
 
 私のクラスはどんなだろう?と、期待感よりも不安感の方がましましな状態で、教室に足を踏み入れる。先生が教壇で話をしているのに全く話を聞かずに騒いでいる生徒たち。怖い雰囲気の人しかいない。というか、私以外男の子。

――紗綾、怯んでは駄目だぞ。

 自分の胸に手を当て、気持ちを落ち着かせて私は大きな声を出した。

「栗谷川紗綾です。よろしくお願いします」

 一瞬だけ視線がこっちに集まり、教室内がしんとなったけれど、すぐに賑やかな状態に戻った。

「栗谷川は、そこの席な!」と、先生が指をさした方向にある、空いている席に座った。

 座る時「あっ……」と言葉が漏れた。だって、私の席の隣にさっき睨んできた金髪のイケメンがいたから。彼は頬杖つきながらこっちを再び睨んでいた。その睨みは、まるで私が、何か彼にとって気に入らないことをやったかのよう。

――私、何もしてないし。

 ムッとしたから睨み返したら、勢いよく視線をそらしてきた。