そっと、ぎゅっと抱きしめて


それから伊吹さんは、どんどん有名になっていき、雑誌の取材やテレビ出演のお仕事も増えていった。

年明けには、個人の「伊吹渚 美術展」を開き、そこには今まで描いてきた伊吹さんの作品が飾られた。

その中にはもちろん、向日葵に囲まれているお義母さんの絵も含まれており、そして一番目立つ場所には、わたしを描いたあの絵が飾られていた。

初めての個人展で伊吹さんは今一番注目を浴びている画家ということもあり、テレビの取材も入っていた。

わたしはテレビの前に座り、LIVEで放送されている伊吹さんの美術展を見ていた。

「あ、お義父さん。渚さん映りますよ。」

珈琲を淹れている途中だったお義父さんを呼び、お義父さんは「おぉ、どれどれ。」と淹れかけの珈琲を放置して、テレビの前にやって来た。

「今回の美術展で一番注目されている作品がこちら何ですが、こちらはどなたを描いた絵なんですか?」

テレビの画面には、わたしの絵が映し出され、アナウンサーが伊吹さんに質問する。

伊吹さんは、「妻です。」と答えていて、"妻"と呼ばれたことに気恥ずかしさを感じた。

「奥様お綺麗な方ですね。」
「ありがとうございます。」
「この奥様の絵のタイトルなんですが、なぜこのようなタイトルにしようと思ったんですか?」

そう言われ、マイクを向けられた伊吹さんは、「つい抱きしめたくなるような背中をしていたので、このタイトルしか思い浮かびませんでした。」と答えていた。

伊吹さんがありのままのわたしを描いたその絵のタイトル。

それはこの時、テレビを通じてわたしも初めて知った。

そのタイトルは、、、

「そっと、ぎゅっと抱きしめて」




―END―