それから、わたしたちがホテルから自宅に戻れたのは、1週間後のことだった。
その1週間はあっという間で、軽い新婚旅行を味わった気分だった。
自宅に戻ったわたしたちは、真っ先に伊吹さんのお父さんに結婚の報告をした。
報告を聞いた伊吹さんのお父さんは、「そうなると思ってたよ。」と優しく微笑んでくれた。
その後は、和総さんとエレナさんにも結婚の報告をし、エレナさんに婚姻届を取りに行ってもらった。
わたしたちは、婚姻届を記入すると、和総さんとエレナさんに証人になってもらい、11月22日の夜にこっそり婚姻届を提出しに行った。
伊吹さんはわたしとの結婚を公表し、ニュース番組では「イケメン画家 伊吹渚が20代後半の一般女性と結婚を発表!」と放送されていた。
そして、わたしが1人暮らしをしていたワンルームの部屋は引き払い、わたしは伊吹さんのご実家で生活することになった。
同居は別に強制されたわけではない。
わたし自身が自分で決めたことだ。
ずっと愛していた奥様と一緒に過ごしてきた家から離れたくないからと、伊吹さんのお父さんが1人で住んでいる家は、1人で住むにはあまりにも広く、家事全般のお手伝いをしたかったからだ。
伊吹さんは、1人で住むならと引っ越しを勧めたこともあったようだが、お義父さんは家から離れることを拒否したそうだ。
だから、そのお義父さんの気持ちを大事にしたくて、わたしは同居を決めたのだ。
そして結婚指輪は、わたしが憧れていたブランドのものを購入してもらうことになり、わたしの左手薬指が痛まないように特注で作ってもらった。
自分の左手に輝く結婚指輪が何だかまだ実感がなく、嬉しさからひっそりと左手を眺めるのがわたしの楽しみになっていた。



