そっと、ぎゅっと抱きしめて


伊吹さんは少し戸惑いながらも「俺なんかが、描かせていただいていいんですか?」と言った。

「伊吹さんだから、描いていただきたいんです。無理にとは、言いませんが、、、。」
「いえいえ!俺なんかに描かせていただけるなんて、光栄です!」
「じゃあ、よろしくお願いします。」

わたしたちは何だか気恥ずかしく、お互い照れ笑いを浮かべた。

「あ、そろそろ珈琲飲めそうじゃないですか?」

わたしがそう言うと、伊吹さんは「あ、そうですね!じゃあ、いただきます!」と言い、丸椅子に置いてあったマグカップを手に取り、珈琲を一口飲んだ。

伊吹さんに続き、わたしも珈琲を口へ運ぶ。

いつもとは違う珈琲の香りが口の中に広がり、わたしは「美味しい。」と呟いた。

「美味しい。やっぱりいつもの珈琲とは違って、珈琲の香りも良いですね。」

伊吹さんはそう言うと、もう一口珈琲を飲み、香りも一緒に楽しんでいた。

すると、伊吹さんのスマホが振動し出した。
どうやら電話のようだ。

「あ、さつきちゃんからだ。」

伊吹さんはそう言うと、スマホを手に取った。

さつきちゃん?
何か前にも言ってたような、、、

「はい、もしもし?」

伊吹さんは電話に出ると、電話の相手である"さつきちゃん"と何かを話し、段々と険しい表情になっていった。

「マジか、、、分かった。すぐ用意する。ありがとう。」

そう言うと、伊吹さんは電話を切った。

「何かあったんですか?」

ただよらぬ雰囲気にわたしは訊いた。

伊吹さんは1つ溜め息をつくと、「しずくさん、申し訳ありません。俺たち、週刊文◯に載るみたいです。」と言った。