そっと、ぎゅっと抱きしめて


それから2日後の仕事帰りだった。

コンビニで買い物をして帰宅している途中で、もうすぐ家に着くという時、女性の必死な話し声が聞こえてきた。

「そんな!わたしは伊吹先生から離れたくありません!」

アトリエ前に見える男女の姿。
そして、この甲高い声。

それは紛れもなく、伊吹さんと峯岸さんだった。

「わたしは、伊吹先生が好きなんです!」

峯岸さんはそう言うと、伊吹さんに抱き着き、それから伊吹さんの首に腕を回すと背伸びをして、伊吹さんにキスをした。

それを目撃してしまったわたしは、息が止まってしまいそうになった。

見てはいけないものを見てしまった、、、
と同時にショックな気持ちが湧き出てくる。

わたしは俯き、何も見ていないフリをしながら早足で自宅のマンションに入った。

鍵でオートロックを解除し、エレベーターなんて待って居られず、階段で2階へ上がると、急いで鍵を開けて自分の家に入ってドアを閉めた。

「はぁ、、、はぁ、、、。」

息切れをして、心臓がドクドクと耳まで響いてくる。

忘れたいのに脳裏に焼き付いて忘れてくれない、伊吹さんにキスをする峯岸さんの姿。

わたしはしばらく何も手に付かず、買ってきたコンビニのお弁当も食べる気を失せてしまっていた。