「伊吹さんは、何も謝るようなことしてないじゃないですか。」
わたしがそう言うと、伊吹さんは首を横に振り、「しずくさんに痛い思いをさせてしまったのは、俺の責任です。」と言い、それからもう一度「本当にすいませんでした。」と言った。
伊吹さんはわたしの左手を優しく擦りながら、マッサージをしてくれた。
伊吹さんの手は大きくしなやかで温かかった。
「しずくさんの手、小さいですね。可愛い。」
「子どもみたいな手ですよね。もっと女性らしい手になりたかったです。」
「俺、しずくさんの手、好きですよ。」
そう言いながら、伊吹さんは指1本1本を優しく包み込みながらマッサージをしてくれ、手のひらのツボ押しまでしてくれた。
「伊吹さん。」
「何ですか?」
「訊きたいことがあるんですけど、いいですか?」
「はい、どうぞ。」
「さっき、わたしのことを"大事な人"だと言ってくれましたが、あれはどうゆう意味ですか?」
わたしがそう訊くと、伊吹さんはわたしの左手に視線を落としたままマッサージを続け、「そのままの意味です。」と言って微笑んだ。
「そのままの意味?」
「しずくさんは、俺にとって失いたくない人ってことですよ。」
伊吹さんはそう言うと、マッサージをする手を止め、顔を上げるとわたしを真っ直ぐに見つめた。
「俺は、1人の女性として、しずくさんを大事に思っています。いつの間にか、、、いや、一目惚れに近いのかな。俺は、しずくさんのことが好きです。」
伊吹さんの言葉にわたしは時が止まったかのような感覚に陥った。
伊吹さんがわたしを好き?
伊吹さんは照れ笑いを浮かべると、再びわたしの手を優しくマッサージし始め、「今日は寒いですね。」と冷えたわたしの指先を温めようとしてくれた。



