「峯岸さん、もししずくさんに何かしたのであれば、今後峯岸さんに俺のマネージャーをお任せすることは出来ません。」
伊吹さんがそう言うと、峯岸さんは焦ったようにこちらを振り向き、「何でですか?!」と言った。
「しずくさんは、俺にとって大事な人です。その大事な人を大切にしていただけない方にマネージャーをお願いすることは出来ません。」
「大事な人って、、、わたしは伊吹さんにとって大事じゃないんですか?!わたしより、この女をとるんですか?!」
「峯岸さんは、俺のマネージャーですよね?ただのビジネスパートナーです。ビジネスパートナーとは、信頼関係が必要だと思いますが、今の峯岸さんを俺は信用出来ません。」
峯岸さんは伊吹さんの言葉に涙を浮かべ、必死に堪えていた。
「峯岸さんとは、今後の話し合いが必要になりそうですね。今日は、もう帰ってください。俺も田尻先生には挨拶が済んだので、しずくさんを送って帰りますから。」
峯岸さんは俯きながら涙を堪え、「、、、分かりました。」と静かに言うと、ピンヒールの音を鳴らしながら、出口へ向かって行った。
わたしは、2人の会話を黙って見ていることしか出来なかった。
ただ、峯岸さんは本気で伊吹さんのことが好きなんだということは伝わってきた。
そのあと、わたしは伊吹さんと一緒にアトリエに帰った。
伊吹さんが温かい珈琲を淹れてくれて、左手をマッサージしてくれると言うので、わたしは自分の定位置に座り、伊吹さんに左手を差し出した。
伊吹さんはそっとサポーターを外すと、「今日は、本当に申し訳ありませんでした。」と自分を責めるようにわたしに謝った。



