そっと、ぎゅっと抱きしめて


そんなことを思いながら、田尻先生の絵を見て回っていると、またあのピンヒールの音が近付いて来た。

ふと、その音のする方を向くと、不機嫌そうな表情の峯岸さんが腕を組んでこちらへ歩いて来て、わたしの目の前で立ち止まった。

「あなた、どうゆうつもり?」
「えっ?」
「伊吹先生に近付いて、どうゆうつもりなのかって訊いてるのよ。」
「どうゆうつもりって、、、。」

すると、峯岸さんは視線を下げ、わたしの左手を見た。

そして、わたしの左手を手に取り、「こんなのつけて、か弱いフリでもして、伊吹先生の気を引こうとでもしてるの?」と言うと、峯岸さんはわたしの左手を力いっぱい握り締めた。

握り締められ、指の関節が痛み、「痛っ、、、。」と声が漏れる。

峯岸さんはわたしの左手を離すと、「これ以上、伊吹先生に近付くのやめてくれる?」と冷たい口調で言った。

わたしは左手の痛みに表情を歪めると、左手を右手で擦った。

「しずくさん?」

わたしの異変に気付いた伊吹さんが駆け寄って来る。

峯岸さんはそっぽを向いて、何も知らないような顔をしていた。

「どうしたんですか?左手、痛むんですか?」
「ちょっと、、、。」

すると、伊吹さんは何か勘づいたかのように峯岸さんの方を向き、「峯岸さん?しずくさんに何かしましたか?」と訊いた。

峯岸さんはそっぽを向いたまま、「わたしは何も。」と腕を組んで知らないフリをしていた。