それからの1週間は、日曜日が待ち遠しくて仕方なかった。
会社にある「ご自由にお持ちください」の箱の中には、多分伊吹さんが言っていた田尻先生の美術展のパンフレットが入っていて、わたしはそれを手に取ってみた。
どうやら田尻先生は、人物画を得意とする画家らしい。
わたしがパンフレットを見ていると、会計の佐々木さんが「三波さんって、そうゆうの興味あるの?」と訊いてきた。
「はい、元々絵を描くのが好きで、本当は絵の勉強をしたかったんですけど。今は見る方が好きですね。」
「へぇ〜、わたしは絵とか全然興味ない。でも最近、テレビにイケメンの絵描きが出てたのよねぇ。何て名前だったかなぁ?伊吹?そんなような名前だった気がするけど。」
え、伊吹さん?
テレビにも出るようになってきたんだぁ、凄いなぁ。
すると、竹中課長が「三波さん、珈琲淹れて。」と新聞を読みながら言ってきた。
「はい。」
わたしは返事をすると、パンフレットを自分のデスクに置き、竹中課長に珈琲を淹れる準備を始めた。
伊吹さんに珈琲を淹れる時は楽しいのに、竹中課長に珈琲を淹れるとなると面倒くさい。
わたしはそう思いながら、竹中課長に珈琲を淹れ、「どうぞ。」と竹中課長のデスクに珈琲が入ったカップを置いた。
竹中課長は珈琲を淹れてもらえるのが当たり前のように無言でカップを手に取ると、口へ運んだ。
「あちっ!」
熱い珈琲で口の中を火傷した様子の竹中課長を横目に、わたしは心の中で笑った。



